応援団は、三回戦までは日帰り。第一試合の場合、前日の22時ごろに下関を出て、途中で休憩をとりながら車中で睡眠をとり、朝方に甲子園につくという強行軍だ。

 コロナ対策で一台の乗車人数を制限せざるを得ず、一試合につき5~6台が必要になり経費がかさんだ。さらにコロナ対策の消毒剤などの購入に金がかかった点が、18年夏との大きな違いだ。

 そうした状況で続いた快進撃。

 準々決勝の18日から、結果的には決勝翌日の23日まで部員と関係者の滞在期間が延びた。担当者は「準々決勝からは応援規模を縮小した」と話す。

 応援に参加した生徒たちは、試合日程や経費を考慮すると、その都度、下関に帰還するよりも現地に滞在した方が経費を抑えられる。そのまま大阪に宿泊し、生徒には5000円から1万2000円の負担をお願いした。

 ただ、そこは注目度の高い甲子園。決勝の大舞台は「全校応援」をすることになった。その結果、総経費は4500万円を超える見込みとなった。

 担当者は、

「野球部員たちのがんばりは本当にうれしいことです。相手校よりはかなり規模の小さい応援ですが、選手たちを少しでも勇気づけたいのは、自然な思いでした」と話しつつ、もうひとつの難題にも言及する。

「甲子園に出るようになって私たちが学んだのは、高校野球ファンの方や、わが校の卒業生や応援してくださる方々も、華やかな応援という甲子園の『絵』に大きな期待をしているということです。決勝戦はとりわけ注目度が高く、テレビで観戦する方もたくさんいます。また、高い教育的効果が期待できることからも、決勝戦では全校生徒で応援を行うと、生徒と保護者、教職員には伝えていました」

 下関国際のCFは今月末で終了するが、28日現在で約1630万円と目標額には届いていない。

 担当者は、

「たくさんの寄付には感謝しかありません。地域の方々からも温かい声をいただいています。甲子園の費用は、特にわが校のような地方の小規模校には難しい問題ですが、必死に頭を使って、どのような工夫ができるのかを考えていきたいです」と締めくくった。

 華やかな舞台の陰にある、ひとつの現実である。(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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