ロシアのウクライナ侵攻によって、日本の防衛についてこれまで以上に注目が集まっている。防衛省は2023年度予算の概算要求で、過去最大の5兆5947億円を計上。年末に決まる最終的な予算は6兆円を超えるとみられている。元外交官で、元防衛大臣政務官の松川るい参院議員(51)は、今後の日本の外交安全保障をどう考えているのか。松川氏が「政治の師」とあおぐ安倍晋三元首相への思いとともに、時事YouTuberのたかまつななが話を聞いた。
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■課題は“台湾有事”を起こさせないこと
――私はいま日本とイギリスで2拠点生活をしているんですが、イギリスでウクライナの避難民の方に取材をしていたら、「北方領土の軍事演習だってあるし、日本は大丈夫か?」と心配されました。私自身は全然危機感がなかったんですが、日本がロシアに攻め込まれる可能性は実際にあるのでしょうか。
松川:今、ロシアの主たる戦線はヨーロッパなんですね。ロシアは背後から突かれたくないのでけん制として極東や北方領土で訓練をしています。でも、だからすぐに北海道に攻め込むかというと、現時点ではそういうことではないと思います。ただし、これで北海道は問題ないので南西諸島方面に勢力を集中しても大丈夫という事態ではなくなりました。問題は「中露連携」です。例えば、台湾有事の際に、日本の勢力を分散させるためロシアが北海道を圧迫することは戦術的にあり得ることです。日本は、北海道防衛にも力を入れる必要があります。
日本で一番危ない場所は南西諸島です。今も続いていますけど、例えば、台湾海峡に侵入する中国の戦闘機が倍増したり、訓練区域と言っているところが台湾の東側にまで来たりしていますね。中国が今回設定した訓練の場所を見れば、中国が仮に台湾侵攻する場合は、もう与那国、宮古、石垣あたりは軍事的に戦域に入ってしまう、つまり日本自身の有事になるんですよ。実際、今回の訓練の中で、与那国島から80キロ地点に中国の弾道ミサイルが着弾しています。まさに「台湾有事は日本有事」なのです。
ですから、日本の領土を守るためには、台湾を平和裏に抑えておく、台湾有事を起こさせないことが重要です。