日本は食料もエネルギーも絶対に自給できないので、(そうなったら)中国にかなり従属せざるを得ない状況になると思います。それぐらい重要な場所を台湾が占めている。
――台湾有事は、何年後ぐらいに起こりうる話なんですか?
松川:5年後。もっと近いかもしれないけど。
――そんなに近いんですか。
松川:そうですね。習近平国家主席が「台湾統一」を自分の功績として残したいと思えばこれから始まる第3期、つまり5年内が要注意期間だと思います。それを抑止できるかどうかが問題です。抑止は実現不可能ではありません。(中国の)共産党政権は、台湾有事を失敗できない。うまくいかなかったら、本当に共産党政権が倒れる可能性がありますから。絶対に勝てると思わないと、なかなか行けないと思います。あと10年ぐらい米国と日本をはじめとする国際社会が中国の台湾進攻を抑止し続けられたら、今度は中国が変わると思うんです。人口ボーナスがなくなって、2030年をピークに少子高齢化の負の側面のほうが多い国になる。そうなると、国内で内紛などいろんなことが起きる可能性があり、台湾統一どころではなくなるかもしれません。何より、中国国民の意識が変わっている可能性は結構あると思います。今は国家勃興のナショナリズム期かもしれませんが成熟すれば台湾の現状を認めた上でよりよい付き合い方を考えた方が良いという態度に変わることもありうるかもしれない。
■元外交官として考える「あるべき外交」
松川:私自身が外交官になろうと思ったきっかけは、修学旅行で広島の原爆ドームや平和記念資料館に行って、二度と日本に戦争が起こってはいけないと、強く思ったことなんですよね。日本を平和に維持し続けるためには、外交官がいいかなって、子どもながらに思ったのが最初です。
――外交についてはどういう視点を持つべきでしょうか?
松川:本当にいい外交というのは、その国から「日本という国は信頼できる」「(日本とは)仲良くしたほうがいい」と思われる仲間を、世界の中でできるだけ増やし、敵をできるだけ減らすことです。その仲間がいい仲間であればあるほど、日本は安全であり、かつ繁栄できるんですよ。いろんな貿易ができて、投資も安心してできるし、人の交流もできます。