こうした事態に、自民党の清和会(安倍派)のある国会議員は、

「東京地検特捜部はどんどんとやってくる。安倍晋三元首相の国葬で、世界中から多くの人がやってくるのに何を考えているんだ。森さんまで手を付けようだなんて、当てつけか」

 と苦々しい表情で話した。

 電通時代、高橋容疑者の部下だった社員は、

「五輪関係の仕事や、組織委員会に出向していた社員は軒並み、事情聴取を受けています。寄せ集めの組織委員会に、スポンサー選定の“専門家”は電通関係者以外にはいなかった。高橋容疑者は電通では神様のような人で、『何か一言いえばその方向で動くしかなかった』と五輪に絡んでいた同僚は話していた。高橋容疑者の力をもってすれば、スポンサー選定などで便宜を図ることはそう難しくなかったのかもしれない」

 と話す。

 前出の落合弁護士は、

「検察時代、特捜部で贈収賄事件をやる時は『足は3本あると良い』と言われました。贈収賄事件は、なぜカネを渡したのかという趣旨、もらった側の職務権限など微妙な点が多くあり、裁判で証言をひっくり返されることがある。今回は理事の職務権限、密接関連行為がカギになる。三つ立件しておくと、高橋容疑者は職務に絡んでカネをもらうような人物だと印象付けられ、支え合うことができるという狙いではないか」

 との見解を示す。

 高橋容疑者と政界のつながりは深いとされる。

 自民党のある幹部は、

「高橋容疑者が経営していたステーキ店で食事をしたなどと、堂々とブログに書いている大臣経験者の議員もいる。今後、高橋容疑者の捜査がどう政界に波及していくのか。旧統一教会でボロボロになりつつある岸田政権にとって、大きな打撃となるかもしれない」

 と警戒感をにじませる。

 五輪汚職は政界まで広がるのか。いずれにしても、徹底的にうみを出し切ってもらいたい。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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