今後の注目は、東京地検特捜部の捜査が政界関係者まで伸びるかどうかだ。

 各紙は8月下旬、高橋容疑者が森元首相にAOKIホールディングスの前会長、青木拡憲容疑者=贈賄容疑で逮捕=を紹介した、と報じた。

 9月1日には、森喜朗元首相の入院中に「お見舞い」として200万円を渡したと青木容疑者が供述している、と産経新聞が報じた。森元首相は、現金の受け取りを否定しているという。

東京2020組織委員会の理事会に出席し、森喜朗会長(当時・右上)から声をかけられる高橋治之容疑者(左から3人目)=2015年9月
東京2020組織委員会の理事会に出席し、森喜朗会長(当時・右上)から声をかけられる高橋治之容疑者(左から3人目)=2015年9月

 元東京地検の落合洋司弁護士が指摘する。

「私も過去に政治家に関連する事件を担当してきましたが、理事で、五輪のことをお願いしている高橋容疑者の紹介で、入院の見舞いに200万円というのは多すぎる感もあります。特捜部もそういう感覚があるから、メディアに流れた200万円のニュースを否定していないのでしょう。AOKI側も、会長という森元首相の職務に何らかの期待をして、もしくは高橋容疑者から『スポンサー選定に関して森元首相にも現金を』などとアドバイスされ、200万円を渡したとなれば、贈収賄事件に発展する可能性はあります」

 高橋容疑者の弟、治則氏は「バブルの寵児(ちょうじ)」と呼ばれ、国内外で不動産、リゾート事業を展開した。だが、1995年に東京の2信組の経営破綻(はたん)に絡み、背任容疑で東京地検特捜部に逮捕された。一審では実刑判決が言い渡された(その後裁判中に死亡し、判決は確定していない)。

 2信組の経営破綻がきっかけで名前が浮上し、逮捕されたのが元労働相の山口敏夫氏だった。

「治則氏の逮捕は当然、山口氏の立件を視野に入れたものだった。治則氏は自身の容疑は強固に否認していたが、最終的には山口氏の関連については認めていた。それが、山口氏逮捕への大きなポイントとなった。高橋容疑者の事件を見ていると、山口氏逮捕と同じように特捜部が政界を狙っているとの見方もできる」

 と話すのは、治則氏の事件を捜査した、特捜部OBの弁護士。

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清和会の議員「森さんまで手を付けようだなんて