巨人時代の久保裕也(写真提供・読売ジャイアンツ)
巨人時代の久保裕也(写真提供・読売ジャイアンツ)

 7月末でプロ野球のトレード期間は終了。7月に3件のトレードが成立したが、例年に比べると少なく、また昨年オフにFAで移籍した選手も又吉克樹(中日ソフトバンク)の1人だけと、NPBの移籍市場は静かな動きに終始した印象だ。

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 そうなると次に各チームが動くのはオフとなるが、FAやトレードでは自由契約となった選手を上手く戦力にするのも補強の一つだ。過去には他球団に拾われて復活したベテランや才能が開花した若手も確かに存在している。そこで今回は過去10年間に、戦力外となりながら他球団で戦力となった選手をピックアップして紹介したいと思う。

 まず実績のある投手で復活した例では久保裕也(巨人→DeNA→楽天)の名前が挙がる。2015年オフに巨人を退団し、DeNAに移籍したが、そこでもわずか9試合の登板に終わり、2年連続で自由契約となった。しかし翌年楽天に入団すると、移籍1年目には中継ぎで3勝をマーク。故障により一度育成契約となったものの、翌年5月には支配下として復帰し、そのシーズンから2年間はブルペン陣を支える貴重な存在となった。引退後は楽天で二軍投手コーチを務めているが、卓越した投球術や度重なる故障を乗り越えた経験は若手投手の指導にも生かされるだろう。

 そして久保以上に実績のある投手では五十嵐亮太(ソフトバンク→ヤクルト)が挙げられる。ヤクルトでは2004年に最優秀救援投手のタイトルを獲得し、その後メジャーを経てソフトバンクでも長く活躍。しかし2018年に椎間板ヘルニアの影響もあって23試合の登板に終わり、オフには戦力外となったが、そこで手を挙げたのが古巣のヤクルトで、実に10年ぶりの復帰となった。そしてこの年は低迷するチームの中でもブルペン陣の柱として活躍。40歳の大ベテランながら45試合に登板して5勝4ホールド、防御率2.98と見事な復活を果たして見せたのだ。翌年はコンディションが上がらず、引退試合のみでの登板に終わったが、五十嵐の存在があったことが、現在のヤクルト投手陣の底上げに繋がった部分もあったはずだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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野手で戦力外から“生き返った”のは?