皮膚の病気などを治療する診療科の皮膚科は、夏に患者が多く混雑するそうです。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が夏場に気をつけるべき皮膚病について解説します。

【写真】夏のキャンプでマダニやヤマビルに注意!「フタトゲチマダニ」(※アップで表示されます)

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 皮膚科の外来は夏がいちばん混雑します。夏休みがあることで学生や児童の受診が増えるのはもちろん、大人の皮膚病も増加します。今回は夏場に気をつけるべき皮膚病について解説します。

 まず、いちばん多いのは水虫です。水虫は白癬菌というカビが原因の皮膚病です。足の指の間にジュクジュクしたかゆみを伴う発疹があれば、水虫をまずは疑います。水虫菌を増やさないためには、カビが嫌う環境を作ることです。それは清潔と乾燥です。足は絶えず清潔を心がけ、共用の足拭きマットを使用する際は水虫菌をもらわないように注意しましょう。特に糖尿病の人は水虫の傷から細菌感染を起こし、足を切断するケースもあります。糖尿病の治療とともに水虫の治療をしっかり行うことも大事です。

 あせもや湿疹をかきむしると、そこから細菌感染を起こして飛び火になります。飛び火は正式には伝染性膿痂疹(のうかしん)という病名が付きます。ついついかゆくてかきむしってしまう夏の湿疹ですが、手をはじめ皮膚には多くの雑菌が存在しています。飛び火も水虫と同じように、患部を石けんで洗うなどして清潔に保つことが重要です。黄色いかさぶたを伴った治りにくいジュクジュクした湿疹は飛び火の可能性があるので一度皮膚科で診てもらうのがいいでしょう。

 アトピー性皮膚炎を患っている人は、ヘルペス感染にも注意です。ヒリヒリちくちくした痛みが皮膚のあちこちに出現したら、カポジ水痘様発疹症というヘルペス感染かもしれません。カポジ水痘様発疹症はアトピーが悪化した人がなりやすい皮膚の感染症です。ステロイド外用剤を塗り続けていても、ピリピリした発疹が体じゅうに広がるようであればカポジ水痘様発疹症の可能性もあります。治療はヘルペスの増殖を抑える飲み薬を病院でもらう必要があります。市販のヘルペスの薬では効果不十分なことが多いので注意しましょう。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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