安倍晋三首相や菅義偉官房長官は維新との関係が良好だった。クリスマスのころには毎年のように、安倍、菅、橋下、松井の4氏で会食する仲で、安倍、菅両氏はダブル選で「中立」を貫いた。心情的には維新を応援していたのだろう。

 そこで「伝統自民」と「現代自民」の読み解きである。公共事業によって地域を発展させる角栄モデルを受け継ぐような「近畿メガリージョン構想」を掲げた大阪自民党は「伝統自民」であり、改革志向が強く、憲法改正にも積極的、そして国土の均衡ある発展よりは都市住民に向けた政策を好む維新は、安倍、菅両氏に通じる「現代自民」ではないか、ということである。

■維新議員がこなす「どぶ板」と空中戦

 先に記した通り、松井氏ら維新の結党メンバーは、自民党を離党した地方議員であり、橋下氏も知事選に初めて出馬する際は自民党が擁立した。自民党本部で知事選を取り仕切ったのは、古賀誠選挙対策委員長であり、菅義偉選対副委員長だった。維新の出自は、自民党にある。

 だからこそ、大阪で与党の立場にある維新の議員たちは、自民党の地方議員と同じように、御用聞きのような徹底的な「どぶ板」をこなし、地盤を固めている。知事も市長も押さえることで、与党議員として行政へのパイプも強調できる。維新の地方議員が増えるのは、大阪での与党構造のあり方として必然である。

 一方、維新が大阪以外で支持を集めるためにやっていることは、どぶ板ではなく、空中戦である。政権党である自民党、そして野党第1党の立憲民主党をSNSやテレビで批判し、「自民も嫌だが、立憲も嫌」という層を取り込もうとする。新規参入の地域には、地方議員もおらず、足場がない。もちろん行政側へのパイプもない。空中戦を仕掛けるしかない事情もあるのだろうが、敵と味方を峻別し、相手を殲滅させようとする政治手法は、安倍氏にそっくりである。そういう意味でも、維新は「現代自民」と言えるのではないか。

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「横浜から自民党がなくなる」