「その時のチーム事情も影響しています。松井が戻ってくる時は、遊撃の後継者で育てていた中島の全盛期だった。松坂が日本球界に復帰する時も若手の投手陣を育成する方針だったのに加え、資金力でソフトバンクに見劣りする背景があった。牧田には熱心に声をかけていましたが…。松井、松坂は球団の宝として最後は声をかけていますから。冷たい球団というわけではないです。昔の西武はフロント陣の対応に問題があり、選手の不信感を呼んで他球団に流出する一因となりました。でも、今は違う。コミュニケーション能力が高い渡辺久信GMが対話重視の姿勢で選手に歩み寄っている。秋山に関しても仕方ないと思います。若手の育成を重視するチーム方針で、長期契約を提示するのはリスクがある。育成能力が高く、常に新陳代謝を行ってきたから不良債権と呼ばれるベテランがいない。FAで主力が流出しても若手がどんどん出てきている事実を見過ごしてはけない」(スポーツ紙記者)

 昨年は42年ぶりの最下位に沈んだ西武だが、辻発彦監督が就任した5年間で18、19年にリーグ連覇を飾るなど5年間で4度のAクラス入りを果たし、今年も首位・ソフトバンクに4.5ゲーム差(5日時点)と逆転優勝に向けて好位置につけている。

 西武でプレーした経験のある選手は、こう語る。

「西武は居心地が良い球団ですよ。選手同士の仲が良くて派閥もない。意識が高い選手が多いですしね。本拠地のベルーナドームは球場の構造が吹き抜けなので夏は猛暑で、春や秋は冷たい風が吹き込むのでタフな環境ですが…。所沢は都心から離れていますが、野球に打ち込む環境としては最高です。他球団でプレーして気づきましたが、西武は骨太な選手が多い。FAで移籍する選手が多いとマイナスイメージがつきますが、球界を代表する選手を多く育てている証だと思います」

 西武ファンにとって、応援していた主力選手が他球団に移籍するのは悲しことだろうが、ニューフェースが次々に誕生してチーム力が落ちない。他球団もチーム作りで参考になる部分が多いだろう。(梅宮昌宗)