所ジョージ
所ジョージ

 6月11日に所ジョージが自身のYouTubeチャンネル『SETAGAYA BASE 工作部』で公開した動画が話題を呼んでいる。「所ジョージ YouTube最後の唄 今日でおしまい」と題された動画の中で、所はギターを弾きながら自作の短い歌を歌っている。

【写真】YouTubeは今日でおしまいと歌う所ジョージはこちら

 その歌詞の中で語られているのは「YouTubeではお金を稼ぐつもりがなかったので広告を入れていなかった。しかし6月1日からGoogleが自動的に広告を入れる仕様に変更されたため、YouTubeをやめることにした」という内容だった。

 この動画の概要欄では「一ヶ月後に削除しますので。10年、楽しかったわ。」とだけ書かれている。所は、これを契機に10年続けてきたYouTubeでの活動を終えることを高らかに宣言したのだ。(『所さんの97チャンネル』には現時点で削除するなどの書き込みはない。)

 所ジョージと言うと、肩の力が抜けた生き方を貫く趣味人というイメージがあるかもしれない。だが、ある意味では、彼ほど頑固で融通がきかない人間もいない。所は、遊ぶということに対して誰よりも真剣であり、不真面目であることに誰よりも真面目なのだ。

 いわゆるYouTuberと呼ばれるような人は、そこから収入を得ることを生業としているので、広告を入れること自体を拒否することはほとんどない。芸能人の場合、YouTubeに広告を入れるかどうかということについてはそれぞれの考え方があるが、撮影や編集にそれなりの手間や人件費がかかることを考えると、そこで収入を得たいと思うのは不思議なことではない。

 しかし、所にとっては、そこには大きな違いがある。彼はあくまでも遊びとしてYouTubeの活動に取り組んできた。そこで収入を得たら、遊びではなくビジネスになってしまう。彼はビジネスをやるつもりはなかったので、Googleがそれを押し付けてくるのなら、YouTubeをやめるしかないと考えたのだろう。実に筋の通った考えである。

 彼は、芸能人がYouTubeに続々と参入してくるずっと前から、密かに動画を公開し続けてきた。そこでは自作の楽曲を発表したり、バイクを改造したり、工作をしたり、自分の趣味をベースにした発信を行っていた。動画の撮影や編集も自分でやっていた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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所が楽しそうなYouTubeは見る者も楽しい気分に