コロナ禍で子どもの視力が悪化している。文部科学省が2021年に公表した『学校保健統計調査』(20年度)によると、裸眼視力が1・0未満の小学生の割合が37・52%、中学生の割合が58・29%といずれも過去最悪を更新した。背景にあるのはデジタル機器の利用の増加だ。近視を進行させないためにはどうしたらいいのか。専門家に基本的な対策から、最新の治療法まで取材した。
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小田原市立病院眼科の栗原大智医師は「基本は、目を離すことと、適度に目を休ませることだ」と指摘する。
日本眼科医会でも、目の健康啓発マンガ『ギガっこデジたん!』で、姿勢を正しくしてタブレットなどを操作すること、適度に目を休めることなどを推奨している。
「目と見るものとの距離が大事。子どもは姿勢を悪くしがちですが、背筋を伸ばして、タブレットや教科書などを見るようにしましょう。その上で、20分とか30分ほどタブレットなどを見たら、5、6m程度遠くを、20秒、30秒ほど見るのがいいです。遠くにピントをあわせるイメージで行うと効果的です」(栗原医師)
また、近視の進行を抑制するとして現在注目を集めているのが、太陽光だ。
興味深い調査結果がある。台湾では2010年から小学校1年生から6年生を対象に、政策として「天天戸外120(屋外で毎日120分)」が実施された。学校で1日2時間、屋外活動を行うという取り組みだ。その結果、視力0・8以下の児童の割合が11年に50・01%だったのが、12年に49・36%に減少。その後も毎年1ポイント程度の減少を続け、15年には46・12%にまで低下した(下グラフ)。
「太陽光を目に入れることが近視の進行抑制に有効であることはわかってきています。週に1回でも2回でも1日2時間以上過ごすことをお勧めします。外で遊ぶ時間が増えれば、室内でスマホやタブレットなどに接する時間も減るので、近視の進行を抑えるのにとても有効です」(同前)