聞き取る能力を維持するために、坂田医師は、必要に応じて補聴器を早く装用することや、日常生活においてなるべく人と話したり、音楽などを聞いたりする機会を多く持つことをすすめる。

 補聴器を装用しても聞こえが改善しない高度・重度難聴の場合、人工内耳を植え込む選択肢もある。人工内耳とは、音を電気信号に変換して脳に伝える方法で、使うためには手術が必要だ。ほかに、中耳に器具を固定して音を聞く人工中耳や、骨伝導により音を聞く骨固定型補聴器などもある。

「近年、人工聴覚器は種類が増え、性能も向上しています。重い難聴のある人がより快適に聞こえを補うための治療の選択肢が増えているといえるでしょう」(山岨医師)

■耳鳴りは気にならなくなることがゴール

 難聴と同じく、加齢により増加する耳のトラブルが「耳鳴り」だ。耳鳴りの多くは難聴が原因で起こり、耳鳴りに悩む患者の90%に難聴があるといわれる。そのため、補聴器を装用するなどして難聴が改善することで、耳鳴りが軽減することもある。耳鳴りには、専用の機器で小さな音を流す「音響療法」も有効とされるが、患者の不安を取り除くなど、環境を整えることも大切だと坂田医師はいう。

「耳鳴りをなくすことは難しくても、軽くすることは可能と考えます。患者さんの不安が解消し、耳鳴りが気にならず、生活に支障がなくなることが耳鳴り治療のゴールといえるでしょう」(坂田医師)

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「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

【取材した医師】
川越耳科学クリニック 院長 坂田英明 医師
東京大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科科長 教授 山岨達也 医師

(文/出村真理子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より