週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

 加齢により聴力が低下する「加齢性難聴」には根治的な治療法はなく、補聴器で聞こえを補うことが治療となる。補聴器を装用するかどうかは、聴力検査の結果や、日常生活における不便さなどにより医師が判断する。川越耳科学クリニックの坂田英明医師はこう話す。

「このぐらいの聴力だから補聴器をつけたほうがいい、というより、あなたの生活環境には補聴器があったほうがいい、というすすめ方をしています。例えば『会議のために必要』『孫の声が聞きたい』『おしゃべりをしたい』など、患者さんのニーズに応じた治療選択が大切です」

 補聴器の装用を選択する際に知っておきたいのが、眼鏡と違い、補聴器はつけてすぐによく聞こえるようになるわけではないということ。補聴器は、使う人の聴力に合わせて適切に調整することが必要であり、補聴器を使う側にも慣れるための時間が必要だ。東京大学病院の山岨達也医師は、「脳が補聴器による聞こえに慣れるまで3カ月ほどかかる」と説明する。

「難聴が進行してからより、早期に装用するほど補聴器に早く慣れ、スムーズに使えるようになるでしょう。聞こえにくさを感じたら、まずは一度、難聴や補聴器の専門医である『補聴器相談医』のいる耳鼻科を受診してください」(山岨医師)

■「音は聞こえるけど聞き取れない」人も

 補聴器の適切な調整と訓練により聞こえが改善した場合は、そのまま補聴器を使って生活する。ただし、加齢性難聴は進行するため、定期的に聴力検査をし、その変化に応じて補聴器を再調整することや、機器のメンテナンスを継続する必要がある。

 補聴器を使用しても聞こえが改善しない場合は、調整が不十分である可能性があるため、まずは補聴器の再調整をおこなう。一方で、それでも改善しない場合、「音は聞こえているが、言葉として聞き取れない」という可能性もあると坂田医師は話す。

 音を聞くのは耳だが、その内容を理解するのは脳だ。聞こえない状態が長く続くと、耳だけでなく脳の機能も衰え、耳に入った情報を理解することが難しくなる。その結果、「音は聞こえていても何を言っているかわからない」「ゆっくり話してもらわないと聞き取れない」ということが起こる。

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補聴器で聞こえが良くならない場合は