「TVメタデータ」を提供するエム・データが発表した「2021年~2022年の年末年始TV番組出演者ランキング」。チョコプラの2人に次いで飯尾は3位に!
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 さらに、飯尾には実力派芸人としての一面もある。若手芸人と並んで大喜利企画やネタ番組に臨んでも、自分の型を貫いてきっちり笑いを取ることができる。人畜無害のマスコット的な存在ではなく、芸人としての牙を隠し持っている。でも、それをむやみにひけらかすことはしない。その奥ゆかしさと品の良さも愛される理由である。

 10年以上前、初期の『キングオブコント』の予選会場でずんのネタを見たことがある。『キングオブコント』はコント日本一を決める大会であり、若手芸人にとっては人生のかかった大舞台だ。誰もが緊張した面持ちで生きるか死ぬかの勝負に来ている。

 でも、ずんのコントにそんな緊張は一切感じられなかった。ネタの中で飯尾は「ぱっくりピスターチオ」などと普段通りにギャグを連発して、相方のやすにツッコまれていた。最後は観客の方を向き直り「それでは皆さん、良い夜を」と言って頭を下げていた。血しぶきが舞う戦場に一瞬だけふわっと爽やかな春風が吹いたようだった。

 テレビタレントが長く生き残るためのコツは、ほかに代わりがきかない唯一無二の存在になることだ。一見すると地味に思える脱力系おじさん芸人の飯尾和樹は、オンリーワンの椅子に鎮座する超一流のテレビ職人なのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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