ずんの飯尾和樹
ずんの飯尾和樹

「2021年~2022年の年末年始TV番組出演者ランキング」(株式会社エム・データ「TVメタデータ」)が発表された。これは、2021年12月28日から2022年1月3日にEテレを除く地上波キー局で放送されたテレビ番組に出演した人物を、番組本数と番組放送回数の多い順に並べたものだ。

【ランキング】年末年始TV出演はチョコプラに次いで飯尾が!

 番組本数で1位に輝いたのは、チョコレートプラネットの長田庄平と松尾駿だった。3位以下には、ぺこぱ、霜降り明星、マヂカルラブリー、かまいたち、ヒコロヒーなど、いま売り出し中の人気若手芸人が名を連ねている。

 そんな中で目を引くのは、3位に食い込んでいるずんの飯尾和樹である。上位にランクインしている芸人の中では圧倒的に芸歴が長く、年長者でもある。数字の上では、そんな彼が今をときめく若手たちに並んで、年末年始のテレビに引っ張りだこだったということになる。飯尾がそこまで求められる理由は何なのか?

 結論から言うと、「温厚脱力系おじさん」と「腕利きの中堅芸人」という2つの顔を持っているからだ。それぞれの要素で必要とされる場面が多いからこそ、たびたび起用されているのだろう。

 テレビで見る飯尾はいつもマイペースで、人の良さそうな笑顔を浮かべていて、無理に前に出ようとはしない。「忍法メガネ残し」「よろけたついでに由美かおる」「ぺっこり45°」など、彼の代表的なギャグもゆるい雰囲気のものばかりだ。

 番組制作のセオリーとして、テレビに出る芸人やタレントの世代は偏りすぎない方がいい。若者ばかりがテレビに出ていると、中高年の視聴者はそこで出てくる話題に共感することができず、離れていってしまう。

 そのため、中年男性タレントは常に必要とされているのだが、その椅子に座れる人材が不足している。一昔前なら「温厚脱力系おじさん」として蛭子能収が起用されることが多かったのだが、さすがに年齢や体力の面で厳しくなってきた。

 そこで飯尾の出番となる。飯尾は決して無理をせず、若い世代の流行や話題に乗ろうともしない。ただ自分のペースを守り、淡々とロケやトークをこなしてみせる。好かれているだけでなく、多くの人に違和感を与えず、嫌悪感を持たれない。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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