「マグロ丼の写真については、実際に届いた商品をアップしたに過ぎません。また『詐欺』も強い言葉ではありますが、期待と違った物が届いたという気持ちを『詐欺』という言葉で表現しただけと解されるので、意見や感想の範囲と判断されることになります。『何されてるかわからんし』も配達員が何かをしているかもしれないということを意味すると思われますが、これも商品を見た際の意見や感想の範疇です。今回のせいじさんの投稿については、法的問題があるとするのは難しいと考えます」(清水弁護士)

 ただ、書き込みの内容によっては、法的責任を問われる場合もあるという。例えば、「この店はこういう手口でたくさんの客をだましている」などと書いた場合、事実を摘示し社会的信用を低下させたとして名誉毀損罪に問われる可能性が出てくる。また、商品の品質自体に疑義を生じさせるような書き込みは、信用毀損罪に当たる可能性があるという。

 仮にこうした書き込みの後、客が激減し、売り上げが減った場合はどうなるのか。

「書き込みが違法かどうかが重要になりますが、刑事上は名誉毀損、信用毀損、業務妨害の罪となる可能性があり、民事上でも損害賠償を請求できる余地はあります。ただ、その書き込みによって売り上げが落ちたという客観的証拠をどこまで立証できるかという点で、因果関係がどこまで認められるかは難しいところがあります」(清水弁護士)

 清水弁護士は、ネット上での中傷問題などに数多くかかわってきた専門家だ。こうした、店側の対応の不満などをSNSに書き込む風潮について、どう感じているのか。

「率直に良くない行為だと思います。あまりに悪質で、さらに店に連絡してもまったく対応してくれず、これ以上被害を広げないためにSNSにアップして周知を図るなどの理由があれば、理解はできます。ただ、店に連絡もせずにミスをSNSにさらし続ければ、店側もSNSに過度に萎縮するようになってしまいます。また、せいじさん自身がネット上で批判されているようですが、今回のように書き込んだ側が思わぬバッシングにあう可能性があります。一般人の匿名アカウントでも『書いたのは誰だ』と炎上し、社会生活を送りづらくなったケースもあります。内容によって法的責任を問われる可能性があることだけではなく、投稿側へのこうしたリスクがあることは、十分に理解しておいた方が良いと思います」

 仕事で一度もミスをしない人はいない。客は店に問い合わせて対応をしてもらうなど、まずは取れる手段がある。軽い気持ちでSNSに不満を書き込んでしまうと、思わぬ“しっぺ返し”があることも覚えておきたい。(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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