衆院選で躍進した日本維新の会(c)朝日新聞社
衆院選で躍進した日本維新の会(c)朝日新聞社
この記事の写真をすべて見る

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、総選挙の結果について。

【写真】前のめり政治主導で波紋?副代表の吉村氏の表情

*  *  *
 維新の圧勝だった。野党共闘は維新に負けたのだ。自民党に入れたくない人たちが、野党共闘を批判する維新に投票した。女性議員も減った。465人中47人いた女性が45人になり、10%を切った。維新が4倍近くに増え衆議院の改憲勢力が3分の2を超えた。

 維新といえば、公明、自民の次に女性候補者の割合が低い党である。コロナ禍で大阪市長や府知事の会見を見る機会が増えたが、大きな声で威勢のいいことを言う、フェミ色の最も薄いマッチョな政党というイメージも強い。大阪維新、日本維新ともに問題を起こす議員も少なくない。北方領土訪問中に「戦争しないとどうしようもなくないですか」「女を買いたい」などと暴言をはいた国会議員や、路上で10代の女性に向けて男性器を露出して逮捕された東京都の港区議もいた。そもそも大阪は、人口比でいえば日本で最もコロナによる死者を出し、病院に行くこともできないまま苦しんだ人が多かった地域である。医療機関で防護服が不足しているからと使えない雨がっぱを供出させたり、うがい薬が有効だと記者会見を開いたりと迷走もした。それでも、この国は、“そんな”維新を選んだのだ。そのことに衝撃を受けている。

 ジェンダー主流化も、人権を掲げる政治も、これまでになく大きな声で訴えられたが、結果に結びつかなかった。立憲民主党は候補者に女性を優遇させることなく、がんばってきた女性候補者を何人も落選させた。結果、「女性はいくらでもうそをつける」「LGBTには生産性がない」と言った杉田水脈氏や、「セクハラ罪という罪はない」と言った麻生太郎氏は当選するが、ジェンダー主流化を訴え、性暴力問題や選択的夫婦別姓を大きく訴えていた候補者たちが苦戦した。立憲民主党の顔である辻元清美さんは維新の新人に負けた。LGBTの権利を訴えてきた立憲民主党の尾辻かな子さん、労働者の権利を訴えた社民党の大椿裕子さんも維新の男性候補者に負けた。東京にも維新の波はきた。性搾取問題に取り組んできた日本共産党の池内沙織さんは、当初、公明党候補者と大接戦と報じられていたが敗れ、維新の新人にも追いつかなかった。無戸籍問題に取り組み、子育て改革をうたった野党共闘の立憲候補の井戸まさえさんは、維新の票にのまれた。

 負けた、のだ。

次のページ
目を潤ませながら真剣に話しかけてくる女性たち