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■バーチャル空間と法制度の新しい関係構築のために

 NFTは、メタバースなどと呼ばれるバーチャル空間上で仮想的な資産を定義づけるための技術や概念としても、期待を集めています。人間の生活の一部がバーチャル空間上に移行することを想像した場合、そこでどう「資産」をもち、それをどう取引するかは避けがたい問題となります。一方、現行の法制度は、基本的には現実空間を前提にしています。現実社会の法制度や法解釈を、そのままバーチャル空間に横展開できるのか、バーチャル空間ならではの解釈が必要なのか等、法律家にとっても判断に迷う部分が圧倒的に多いわけです。

 私は、社会生活のバーチャル空間への移行自体は、避けがたいものであると考えています。そうした動きにより一足飛びに世界が変わるとは思っておらず、また、世界の大部分がそちらに塗り替わるとも考えていませんが、しかし確実に変化は訪れます。

 1日は24時間で決まっており、余暇時間には限りがあります。そのため娯楽産業には古くから、そうした限られたパイを、誰がどう奪い合うかという発想があるといわれます。そして古くは、例えば映画館で映画を見る、書籍を読むといった形で娯楽時間が占有されてきました。それが、いわゆるサブスク型モデルの動画視聴になったり、電子書籍になったりという形で、一部オンライン化してきました。

 その次に起きるのは、生活自体のオンライン化。それが現に起きたのが、コロナ禍をきっかけとした急速なDX化です。コミュニケーションの多くの部分をオンラインで完結できるようになり、いささか極端なオフィス不要論まで語られました。こうした動きの延長として、オンライン化の次に訪れるのがバーチャル化であるとみています。


 最近は、Facebook創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏がアバターなどを使ったメタバース内で会議をしている様子が公開され、話題になりました。同社は、メタバース開発のために今後1万人を雇用する計画も公表しています。

 バーチャル化が仮想会議室のような形で進むのか、それとも娯楽分野から広がるかはわかりませんが、今後、大きな利用者を抱えるサービスが出現すれば、かつてのインターネット利用者の拡大やオンライン化の流れがそうであったように、バーチャル空間の利用自体への抵抗感が薄まり、分野を問わず活用されるようになると見込まれます。

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バーチャル空間が分野を問わず活用されるようになれば…