増田雅史弁護士(撮影/写真部・高野楓菜)
増田雅史弁護士(撮影/写真部・高野楓菜)

 他方、NFTは一般に、支払・決済手段としての機能を持たないので、暗号資産に関する法規制は適用されないと考えられます。金融庁も、ガイドラインの改正に伴うパブリックコメント手続の際、「ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられますので、2号仮想通貨には該当しないと考えられます」と明言しています。

 このようにNFTは、同じブロックチェーン技術を活用したトークンであっても、暗号資産とは異なり金融規制による制約を受けないと整理する余地が十分にあるので、参入が比較的容易な成長分野として注目されている面があると思います。もっとも、「NFTだから暗号資産でない」といった単純な話では必ずしもないですし、法規制は金融規制に限られるわけでもありませんので、安心して事業を営むためには、事業やサービスの内容に応じた慎重な検討が欠かせないのが実情です。

■海外のNFTビジネスモデルは、日本に持ち込めるのか

 特に多いご相談は、じつは「賭博」関係です。刑法上の賭博罪にあたるかどうかの線引きは実務上かなり難しく、偶然性を利用して、財産の増減を競うような構造にあるものが、広く該当する恐れがあるためです。ひとたび賭博に該当すると刑事罰が科され得ることもまた、事業者にとっては重大なリスクとして意識せざるを得ない点です。

 我が国では、オンラインゲームが他国とは少し違った発展過程をたどり、いわゆる「ガチャ」の仕組みが有力な収益手段として発達しました。このガチャについては、消費者の射幸心をいたずらに煽っている、果ては景品表示法違反に該当する可能性がある(コンプガチャ騒動を覚えておられる方もいらっしゃるでしょう)などと問題視されたこともありましたが、その後、私も弁護士として関与するなかで自主規制の仕組みが業界主導で整備され、現在は大きな問題が生じなくなっています。

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NFTの取引可能性の高さが、問題を顕在化させる