天羽健介・増田雅史『NFTの教科書』※Amazonで本の詳細を見る
天羽健介・増田雅史『NFTの教科書』
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 暗号資産(仮想通貨)をはじめとするブロックチェーン関連の事業者にしても、技術や他社事例への勘所はあっても、ルール関係の情報が極めて少なく、「そもそも何を聞いていいかわからない」という状態なのです。これは、未踏の地を目指して道なき道を暗中模索する状況であり、業界はいわば地図のない状態に直面しています。

 今回、自身の発案のもと、共同代表編著者として『NFTの教科書』を上梓した背景には、こうした切実なビジネスサイドのニーズがあります。法規制とビジネスの現在地を詳述した同書がNFTビジネスの健全な発展に資する文字通りの道標として、多くのビジネスパーソンに活用していただけることを願っています。

■NFTは暗号資産ではないので参入しやすい!?

 事業者からの基本的な質問で多いのは「NFTは暗号資産なのか」というものです。ファンジブル(代替性)とノンファンジブル(非代替性)という技術・機能的な違いもさることながら、暗号資産とNFTは法規制の上でも決定的に異なります。

 ビットコインやイーサなどの暗号資産は、法制度上は支払・決済手段として扱われています。当初からマネーロンダリングなどに使われるという懸念があり、国際的に金融規制を課す方向で議論されたわけです。日本は2016年に資金決済法を改正することによって、2017年4月から世界に先駆けて暗号資産(当時は「仮想通貨」でした)に対する規制を導入し、無登録では「暗号資産交換業」を営むことができない法制度になっています。

 その後、暗号資産に関しては、2017年のICO(イニシャル・コイン・オファリング)ブームも手伝って、決済手段として用いる目的ではなく投機的な思惑から売買が活発になり価格が乱高下する状況となりましたが、その後、預かり暗号資産の管理の不備や詐欺的な事案の発生といった問題が生じたことや、投資収益の分配を目的とする新たな分野(セキュリティ・トークンと言われることがあります)の登場といった社会の変化を踏まえ、2019年には規制強化を含む法改正が行われました。私は当時、金融庁の専門官としてその立案にかかわり、同改正法は2020年から施行されています。

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NFTは一般に、支払・決済手段としての機能を持たない