恩田夏絵さん(撮影・片岡和志)
恩田夏絵さん(撮影・片岡和志)
バリへ向けて航行する船の上での一枚(撮影・片岡和志)
バリへ向けて航行する船の上での一枚(撮影・片岡和志)

 世間では「ひきこもり」と一口に言いますが、ひきこもる理由も、そのキャラクターも千差万別です。ゲーム廃人と呼ばれたひきこもりもいれば、健康オタクで早寝早起きを崩せないというひきこもりもいます。不登校新聞編集長の石井志昂さんは、そんな個性豊かでドラマチックな人生を歩んできたひきこもりの人たちを「ひきこもりスーパースターズ」と呼んでいます。今回はその一人、恩田夏絵さん(34歳)の半生を紹介します。

【全身ショット】もしかして後ろに写るのは…撮影場所は職場!

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「着物は日本の文化ですが、『赤は縁起がよい色』というのはアジア共通です。日本のお正月文化を楽しんでもらいたいと思い、『赤』を指し色にして文化の交差点をテーマにコーディネートしてみました」

 写真はバリ島に向けて航行する船の上で撮った一枚。選んだ着物のテーマを、そう恩田さんは説明してくれました。大胆な柄の着物にインパクトのある小物を合わせるなどなかなかの着こなし上手です。

 そんなおしゃれな恩田さんの愛称は「ブイちゃん」。見た目がわりと派手な人に見え「ブイブイ言わせていそう」という印象からついたあだ名です。私が出会ったのは10年前、これまで何度も取材をし、いっしょに仕事をさせてもらいましたが「納得のあだ名だな」と感じています。言うならば勢いを重視するヤンキー気質な人なのです。

 すでにこの段階で「ひきこもりらしくない人だ」と思われそうですが、こんなもんじゃありません。職場は世界一周の船旅でおなじみの「ピースボート」です。自身は「おうちが好きだし新しい場所へ行くのはしんどい」と語っていますが、仕事で旅した国々は数十カ国。これまで地球5周分の船旅をしてきました。

 ちなみに巡り巡った都市のうち、好きな地域のひとつと言っていたのが「ドバイ」。理由は「ドバイという街の持つダイナミックさが、これまで訪れた中東の地域とはまたちがった印象だったから」。あんなにも高層ビルが立ち並び、未来都市とも言われるところが好きだなんて、いよいよ「ひきこもりらしさ」が感じられません。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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ブイちゃんの「デビュー」は早かった