ところがブイちゃんも、ひきこもり経験者なんです。その半生を紹介したいと思います。

■ デビュー早め 自傷が止まらなかった過去

 ひきこもりのきっかけは不登校。学校への行き渋りは小学校の2年生から始まりました。当事者界隈では不登校時期の始まりを「デビュー」とも言いますが、小学校低学年の不登校だと「デビュー早め」なんて言われます。ちなみに大学以降の不登校は「デビュー遅め」で、私のような中学校デビューは、最も多いパターンなので何も言われません。

 話を戻します。小学校2年生のころから、ブイちゃんは「学校とは合わないなあ」となんとなく感じていたそうです。友だち付き合いや学校の授業に対して、言い表せない違和感を抱えていました。しかし、まわりのみんなは、あたりまえのように通っています。感じている違和感は自分のなかで膨れ上がり、ついには登校自体が苦痛に変わってきました。行ったり行かなかったりをくり返す「行き渋り」が始まったのはそのころです。

 さらに息苦しくなったのは、同調圧力の強い「女子グループ」との付き合いでした。みんなでいっしょにトイレへ行き、みんなでいっしょの流行り物を買い揃える。空気を読んでいないとすぐに非難される。もっともつらかったのは「がんばるのがカッコ悪いという空気」でした。勉強も部活も学校行事も「そこそこやっていく姿勢がよし」とされ、一生懸命にがんばろうとするブイちゃんは女子グループのなかで居場所を失っていきます。

 教室内で居場所を失ったブイちゃんは小学校3年生から、多くの時間をひきこもって家の中で過ごしました。その日々は、自分を責め、将来を悲観する苦しいものでした。中学生のころは、どうにも気持ちのやり場に困って、昼夜を問わず自傷に走ってしまうこともあったそうです。

 その後、新天地を求めて高校へ通ったり、アルバイトを始めたりもしましたが苦しさは続きました。自分が感じている違和感に、共感してくれる場や人と出会えなかったからです。心に溜まった違和感が解消されず、「心はずっとひきこもったままだった」と当時の心境を語ってくれました。

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