さらにはブイちゃんたちのもとには、自治体などからの講演依頼や内閣府の有識者会議(※)からも参席のオファーが届きました。これらの活動を活かして、今年6月末には「ひきこもり白書2021」を発行。研究価値の高い資料までつくっています。

 女子グループが苦手で不登校になったブイちゃんが、女子会を全国展開していく。そんなまさかの展開に発展していたのです。

■ 違和感こそ大事にされるべきでは

 ひきこもり経験を活かして活動をつくってきたブイちゃん。展開に恵まれたのは周囲からのサポートがあったからかもしれませんが、本人の「がんばり屋さん気質」も多分に影響したと私は思うのです。ブイちゃんを見ていると「がんばっていれば、いつか報われる」と私はいつも勇気づけられます。一方、学校時代は、教室内で居場所がなく、本人も「みんなと合わせられない」と悩みました。

 ブイちゃんの半生をふり返ると、どんなにがんばり屋さんでもひきこもりや不登校になる、ということがわかります。学校や職場に対して違和感を抱えているとき、「がんばり」だけでは解決できません。もっと言えば自分が抱える違和感を大切にして転身したほうがいいのかもしれません。

 ブイちゃんは既存の学校とは合いませんでしたが、新しい学校(グローバルスクール)をつくりました。女子グループとはソリが合いませんでしたが、ひきこもり女子会を全国展開しました。

「合わせる」よりも「転身」がときには必要なのでしょう。私たちは、ついつい合わせられない自分を責めてしまいがちですが、違和感も大事にしていいはずです。そんなことをブイちゃんの話を聞いていると、いつも思わされるのです。(文/石井志昂)

就職氷河期世代支援の推進に向けた全国プラットフォーム(内閣府)

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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