写真はイメージ/GettyImages
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「保障」「出張」「裏をかく」……じつは戦場で使われていた言葉だということをご存じでしょうか? 武器や戦いにまつわる15の言葉を、由来や語源から見ていきましょう。現在2021年7月号が発売中の朝日新聞出版『みんなの漢字』から紹介。※監修・久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)

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「狼煙」
→狼の糞を燃やすと、煙がまっすぐ上がる

 語源は「のろ」が「野良」で、「し」は気または火といわれています。中国では古くから、燃やすものに狼の糞を混ぜると、風が強いときでも煙がまっすぐに上がるといわれ、「狼煙」の字が用いられていたことから、日本語の「のろし」に当てられました。中世以前は「烽火(とぶひ)」とよばれており、「のろし」に「烽火」の字を当てることもあります。

「横槍を入れる」
→正面衝突する軍の横から槍で攻撃を仕掛けた

 会話の途中で横から口を挟むことを「横槍を入れる」といいますが、なぜ槍なのかというと元は戦場で使われた言葉だからです。横とは軍隊の横のことで、二つの軍が正面から戦っているときに、別の軍が側面から槍で攻撃を仕掛けることを「横槍」といったのです。それが転じて、会話の場面で用いられるようになりました。

「埋め草」
→城攻めで用いられた堀を埋めるための草

 かつて、城を攻める際に周囲の堀を草などで埋めてから攻撃しました。そのときの草を「埋め草」といい、古くは『太平記』に記述がみられます。江戸時代になると、欠けたものや空白を埋めるものを表すようになり、のちに新聞や雑誌で余白を埋めるための記事を意味するようになりました。

「牙城」
→象牙の飾りがついた将軍旗のある城

 中国の歴史書にある言葉です。かつて、将軍の旗の上部には象牙の飾りがあったことから、将軍旗を「牙旗(がき)」といいます。「牙城」とは、この牙旗が立っている城のことで、つまり将軍のいる城を表します。そこから、比喩的に本拠地や中心部などの意味で用いられるようになりました。

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