※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 新型コロナウイルスの治療薬として新しく承認された薬があります。経口JAK阻害剤バリシチニブという薬で、アトピー性皮膚炎や関節リウマチの薬としてすでに使われています。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が解説します。

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 COVID-19に対する治療薬として経口JAK阻害剤バリシチニブ(商品名:オルミエント)が新しく承認されました。「SARS-CoV-2による肺炎(ただし、酸素吸入を要する患者に限る)」が対象です。承認の根拠となったのがアメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)主導の国際共同第3相試験(ACTT-2)です。

 この試験は、1033人の入院中のCOVID-19患者に抗ウイルス薬レムデシビルと、バリシチニブまたはプラセボを追加投与して回復までの期間を調べたものです。結果として、レムデシビルにバリシチニブを追加した患者は回復までの期間(中央値)が7日であったのに対し、プラセボ群では8日でした(回復率比:1.16)。

 さらに酸素吸入を行っていた患者の回復までの期間は、併用療法では10日、プラセボ群では18日でした(回復率比:1.51)。28日後の死亡率は、併用療法群で5.1%、プラセボ群で7.8%でした(死亡のハザード比:0.65)。(文献 N Engl J Med 2021; 384:795-807)

 つまり、回復までの期間を短くし、死亡率を減らす効果が認められたのです。このような結果から、バリシチニブはCOVID-19の治療薬として有効であると判断され、とくに効果が認められた酸素吸入を要する患者に日本では適応となったわけです。

 バリシチニブですが、実はこの薬、一部の皮膚科医はすでに病院で処方しています。それはCOVID-19に対してではなく、アトピー性皮膚炎(アトピー)に対してです。この薬は、COVID-19のために新たに開発された薬ではなく、すでにアトピーなどの他の病気で使われていた薬をCOVID-19で臨床試験を行って承認されたのです。

「どうしてアトピーに?」

 と、思う人も多いでしょう。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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