東京五輪を間近に控えた中、日本バレーボール協会の判断は正しかったのか?※写真はイメージ (c)朝日新聞社
東京五輪を間近に控えた中、日本バレーボール協会の判断は正しかったのか?※写真はイメージ (c)朝日新聞社

 今夏に東京五輪は開催すべきではない――。そんな世論が大勢を占める中で、スポーツ界は五輪に向かって進んでいる。それだけでも国民の理解を得られるのか難しいところだが、5月8、9日にはもっと世間の理解を得がたいイベントが行われようとしている。

 バレーボール男子の日本代表による紅白戦だ。会場は群馬県高崎市の高崎アリーナ。収容人数の50%に人数制限はしているものの観客を入れての開催で、主催するのは日本バレーボール協会(以下、バレー協会)である。

 バレーボールは5月1、2日に東京五輪の会場となる有明アリーナで、男女の中国代表を招いて親善試合を行った。当初は観客を入れる予定だったが、東京都に発令された緊急事態宣言でイベントの無観客を求められて観客を入れずに実施。こちらは東京五輪のテスト大会を兼ねていることもあり、試合を行うこと自体に大義名分はあった。では、今回の紅白戦はどうだろうか。事情に詳しいスポーツライターは話す。

「この時期に強化のために紅白戦をやるのであれば、合宿中の味の素ナショナルトレーニングセンターでやればいいだけです。わざわざ観客を入れてやるのは、バレー協会が金儲けをするためだけの目的です」

 試合会場となる高崎アリーナは、新幹線が停車する高崎駅から徒歩10分ほど。アクセスの良さから近年は多くのスポーツイベントや文化的イベントが実施されている。群馬県は緊急事態宣言が発令されておらず、スポーツイベントを無観客で実施することも求められていない。しかし、である。日本バレーボール協会の関係者は明かす。

「観客は群馬県内でなく、東京都内を中心とした首都圏から多く来ることを想定しています。新幹線のアクセスがいいので、都内からのお客さんがメインになるでしょう」

 そもそも緊急事態宣言は「人流を抑制する」ことが目的だ。バレー協会が観客として見込んでいるのは、その緊急事態宣言が発令されている東京都民。人流の抑制という国策に反した上、東京都の小池百合子知事からの他県への外出を控えるように求める要請も完全無視し、自らの懐を潤すためだけに都民に他県への移動を促すという、理解しがたい暴挙である。変異株がまん延しつつある東京から訪れた観戦者が試合前後に高崎で飲食することで、変異株の感染拡大のリスクさえある。そのような事態が起これば、東京五輪開催に向けて更なる逆風になるのは間違いない。記者会見で問われた嶋岡健治会長は下記のように回答した。

「高崎は緊急事態宣言外。観客の人数を制約ある中でやらせて頂く」

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紅白戦の開催はお金が目的?