あくまで収容人数の50%までの観客を入れての実施は問題ないとの認識を強調した。小池知事から県境を越えた移動を控えるように要請されていることを記者に指摘されても「開催する自治体から許可を得ている」の一点張り。都民がチケットを買って訪れることについても「(チケット購入者を)差別はしていない」と知らぬ存ぜぬで押し通した。

 有観客での実施にこだわるのは、ずばり「カネ」だ。バレー協会は2021年度で約4億7千万円もの赤字予算を計上。コロナ禍による協賛金の減少や収益を見込んでいた国際試合の開催がなくなったことが響いたとはいえ、近年は赤字続きだ。6月にバレー協会理事の改選を迎えるため、会長続投のためにもこの紅白戦で何としても収益をあげたい。嶋岡会長の言葉からは、そんな思いがにじみ出る。そこには、税制などで多大なる優遇を受けている「公益財団法人」の長としての自覚などまるでない。

 この試合が東京五輪の予選や、前出の親善試合のようなテスト大会など、やらなければならない理由があるならば理解も得られるだろう。しかし、大義名分なく金儲けだけが目的の紅白戦では世間の理解は得られない。スポーツ観戦でのクラスター発生は少ないとは言え、バスケットボールの試合観戦でクラスター認定された例もある。

 日本バレーボール協会は先ほども書いたように税制などで多大なる優遇を受ける「公益財団法人」だ。また、小学生から実業団まで、そしてバレーボールに加えビーチバレーボールやソフトバレーボールまで、試合出場のために必要となる個人登録料を徴収するなど、他にも多くの安定した財源を持っている。プロ野球やJリーグ、Bリーグも試合を行っているが、それらの団体は「公益財団法人」でもなく、興行で成り立っている団体であり、バレー協会とは立場が違う。国や都の要請を完全無視し、感染拡大を引き起こしかねない人の移動を「公益財団法人」が自らの金儲けのために推奨するという姿勢には、開いた口がふさがらない。

 バレー協会の金儲けのために利用され、世間から厳しい目を注がれるのはいつも選手たちである。東京五輪に向けて練習に打ち込む大切な時期だけに、選手たちが批判されないことを願うほかない。

 金儲けに目がくらみ、良識を失った嶋岡会長と日本バレーボール協会の愚行。東京五輪開催に向けて世論を敵に回すことにつながりかねない強行開催には、スポーツ界からも支持は得られそうにない。

 観戦者が感染者を増やすことにならないことを祈るばかりだ。