ダルビッシュには、今季もサイ・ヤング賞を狙える力があり、地元サンディエゴでは1998年にチームを優勝に導いたケビン・ブラウン投手の再来だと騒がれるほど、熱烈な歓迎を受けている。今季、パドレスが目指しているのは、球団初のワールドシリーズ制覇だ。チームは昨季、ナ・リーグ2位の勝率を記録し、今季の優勝候補上位にランクインする実力を持っている。まずは、ナ・リーグで同じ西地区に所属し、昨季の覇者であるロサンゼルス・ドジャースを倒すことが至上命題となっている。宿敵ドジャースに対抗できる戦力を揃えるため、シカゴ・カブスからダルビッシュを電撃的に獲得したという経緯があるだけに、現地でのダルビッシュへの期待はそう簡単には揺るがないようだ。

 一方の前田健太は、ダルビッシュ以上に期待を懸けられている。「記者を務めて14年、前田のような支配的な投手は見たことがない。最も信頼できる先発だ」と、ツインズの地元紙『スター・トリビューン』のフィル・ミラー記者は評価する。

 前田は昨季開幕前にドジャースからツインズに移籍した。ドジャース時代、シーズン序盤では先発中心、終盤は中継ぎに回るという起用法の中で何年間も過ごし、その実力を発揮する機会に恵まれなかった。前田自身も望んだこの移籍は、まさにキャリアのターニングポイントだった。昨季は11試合に先発し、6勝1敗、防御率は2.70。8月18日には、ミルウォーキー・ブリュワーズ戦で、9回途中までノーノーに抑える好投をみせるなど、メジャーキャリア最高級の活躍だった。

 一方でチームは前田獲得のための犠牲も払った。「有力プロスペクトだったブルスダー・グラテロル投手を放出してでも獲得したかったのですから、誰もが認めるエースになることが求められていました」と、同じく地元紙のメーガン・ライアン記者は語る。もちろん、その期待に応える力を前田はすでに示している。

 しかし、開幕戦の前田は彼らの期待に応えるものではなかった。開幕戦では一体何が起こったのか。

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