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【膵がん手術】患者はどう治療法を選べばいい? 専門医が解説「手術可能かどうかは病院で差」

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より

 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「膵がん手術」の解説を紹介する。

【図解】膵がん手術の選択の流れはこちら

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 膵がんは、がんの中でも最も治療が難しいものの一つである。初期の頃にはほとんど自覚症状がなく、進行が速いため何らかの症状が出て病院を受診したときには、すでに膵臓の周囲や肝臓など他の臓器に、がんが広がっていることが多い。

 見つかった時点で手術ができるのは全体の20%~30%。しかし手術ができる場合には、効果のある化学療法を手術の前後におこなうことで、5年生存率が50%程度にまで改善する。

 膵がんの治療方針を決める上で重要になるのが、進行度分類や切除可能性分類だ。ステージ0とIは切除可能、ステージIIは切除可能だが一部切除可能境界が含まれ、ステージIIIには切除可能境界と切除不能(局所進行)が含まれる。ステージIVは切除不能となる。

 膵がんの主な治療方法は、手術による切除と、抗がん剤などによる化学療法や化学放射線療法である。

 2019年に改定された「膵癌診療ガイドライン」では、切除可能ながんでも再発を防ぐため、手術前の化学療法が推奨されている。また手術後も、進行や肝臓などへの遠隔転移を防ぐための化学療法が必須となる。

 手術ができない場合には、化学療法や化学放射線療法、症状を改善するための治療をおこなう。また近年では、手術ができないとされた患者でも化学療法や化学放射線療法が効果を上げ、手術可能となるケースも増えている。

 膵がんでは「手術ができるかできないか」が大きな選択肢となるが、ここで非常に重要なのは「できる、できない」の判断は病院による差が大きいということだ。

 膵臓は近くに動脈や重要な血管があり、がんがこれらの血管に隣接したり巻き込んだりしていることも多く、手術には高度な技術が必要になる。また進行が速く、遠隔転移や再発をするケースも少なくない。膵がんの疑いがあれば、がんの専門病院や大学病院など、ある程度規模が大きく膵臓を専門とする医師、内科、放射線科などのスタッフがそろった病院で診断を受けることが望ましい。東京医科大学病院の永川裕一医師は、次のように話す。

「膵がんは手術も治療も非常に難しい病気です。進行が速いので少しでも早く専門医のいる病院を受診し、精密検査を受けて早急に治療を開始することが何よりも大切です」

■遠隔転移と血管への広がりが手術の可能、不可能を分ける

 膵がんの進行度は、切除可能性分類(キーワード参照)によって表されることが多い。手術ができないと判断されるのは、肝臓などへの遠隔転移がある場合と、主要血管浸潤(キーワード参照)がある場合だ。

 今回は、遠隔転移はないが血管への浸潤があり、切除不能と診断されたケースを見ていこう。

 富山大学病院の藤井努医師は言う。

「血管に浸潤していても、技術的には手術は可能です。ただ、無理に手術をしても予後が非常に悪く、すぐに再発してしまい、患者さんにとって良いことは一つもありません。ですので、まずは化学療法などをおこない、がんを食い止めるとともに遠隔転移を抑えます」

 切除不能と診断されると、ゲムシタビンやナブパクリタキセルなどさまざまな抗がん剤を組み合わせた化学療法や、化学放射線療法などがおこなわれる。

 一方、遠隔転移や主要血管への浸潤がなく切除可能と診断された場合には、手術が選択される。その場合も、ガイドラインでは手術後の再発を抑え生存率を伸ばすため、手術前に化学療法をおこなうことが推奨されている。

■コンバージョン手術で生命予後が50%延長

 最近では切除不能と診断されても、化学療法や化学放射線療法の効果により手術が可能になる事例も増えている。このような手術をコンバージョン手術(治療方法を変更しておこなう手術)という。

 化学療法をしながら定期的に検査をし、コンバージョン手術の可能性を探っていく。コンバージョン手術は、腫瘍マーカーの低下や腫瘍が縮小して血管から離れるなど治療の効果、遠隔転移の有無、患者の年齢や栄養状態を含め、総合的に慎重に評価、検討した上で選択される。

「数年前まで、手術ができない膵がんは非常に厳しい状況でした。しかしこの4、5年は新しい薬剤も開発され、化学療法の効果が出て手術ができるようになる人も増えています。コンバージョン手術を受けた患者は生命予後が50%程度延びるというデータもあるので、諦めずに専門医のいる病院に行ってほしいと思います」(藤井医師)

 コンバージョン手術後には、再発を抑えるための化学療法がおこなわれる。

「手術で腫瘍を取っても、すでに微小な転移が肝臓などにあって再発することも多く、手術前後の化学療法はとても大切です。手術も含め治療期間が長くなるので、患者さんには体力をつけるため、しっかり食事を取ることやからだを動かすことを強く勧めています。からだが弱ってしまうと大きな手術や化学療法に耐えられません」(永川医師)

 コンバージョン手術が難しい場合には、化学療法の継続や症状を緩和する治療などがおこなわれる。

 ランキングの一部は特設サイトで無料公開しているので参考にしてほしい。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/
【医師との会話に役立つキーワード】

《切除可能性分類》
手術ができるかどうかを判断基準とした、膵がんの進行度を表す分類の一つ。「切除可能」「切除可能境界」「切除不能(局所進行)」「切除不能(遠隔転移あり)」の四つがある。主要血管浸潤があると切除不能(局所進行)になる。

《主要血管浸潤》
膵臓の周囲に集まっている、肝動脈や腹腔動脈、上腸間膜動脈など、生命を維持するために重要な血管にがんが広がっていることを言う。がんが血管の近くにあったり血管を巻き込んでいたりすると、手術が困難なため切除不能となる。

【取材した医師】
東京医科大学病院 消化器・小児外科学分野准教授 永川裕一 医師
富山大学病院 消化器・腫瘍・総合外科教授 膵臓・胆道センター長 藤井 努医師

(文/梶葉子)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2021』より


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