握手会や選抜総選挙を連動させるシステムは大きな注目を集め、AKB商法という言葉も生まれた。そのサクセスストーリーの主人公というべき、前田敦子が発した、

「ひとつだけお願いがあります。私のことは嫌いでも、AKB48のことは嫌いにならないでください」

 という名言は、キンタロー。の物まねネタにもなり、多くの人が知っている。指原莉乃や峯岸みなみのスキャンダル、あるいはNGT48で起きたファンも絡んだトラブルについても、またしかりだ。

 このため、48系で活躍したメンバーはそのキャラをとことん消費されることとなった。卒業後は別の顔を見せなくてはいけない。それがいかに難しいかは、過去の国民的グループにおける事例が示している。ピンクレディーのふたりも、モーニング娘。の卒業組もかなりの苦労を味わうこととなった。

 そんななか、ヒントになるような成功モデルを示したのが、川栄李奈と指原だ。前者は女優、後者はバラドルとして、道を切り開いた。特に川栄は、選抜総選挙の最高順位が16位と、グループ時代は大した実績を残せず、ファンによる握手会襲撃事件の被害者という印象くらいしか持っていなかった人も多いだろう。そんな脇役的存在が卒業後、出世頭と呼ばれるほどの大躍進を遂げたのである。

 その転機となったのが、2016年前期のNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」。ヒロインが身を寄せる下町の弁当店の娘を演じて、爪痕を残した。その後、ドラマや映画、CMにも引っ張りダコとなり、本年度後期の朝ドラ「カムカムエヴリバディ」ではヒロインのひとりに決定。今月スタートのNHK大河ドラマ「青天を衝け」にも出演する。

 これが女優志向の48系卒業組に影響を与えたことは、想像に難くない。大島優子は二度目の朝ドラとなった「スカーレット」(19年度後期)でヒロインの幼なじみをオバサンになるまで演じきり、評価を高めることに。島崎遥香は「ひよっこ」(17年前期)でクセの強い役をこなし、女優としての株を上げた。松井玲奈は二度目の朝ドラ「エール」(20年度前期)にヒロインの姉役で登場。二階堂ふみや森七菜と絶妙なコントラストを見せたものだ。

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「上を目指すのはいいや」(西野七瀬)