また、朝ドラとは縁のない前田敦子にしても、川栄のことは気になるのではないか。こちらは卒業後しばらくソロ歌手としても活動したが、やがて女優に専念。一昨年の映画「葬式の名人」や昨年のドラマ「伝説のお母さん」(NHK総合)など、個性的な主演作を残している。AKBの象徴的なポジションだった分、その後の展開が難しいことを思えば、十分に健闘しているといえる。

 なお、川栄は早くから女優志望で、朝ドラへの憧れも強く、初めてオーディションを受けたのはグループ在籍中の「あさが来た」(15年後期)だという。ヒロインを射止めた「カムカムエヴリバディ」は6度目の挑戦だったとのことだ。

 そこにはAKBならではのハングリー精神もプラスに働いたのだろう。なにせ、わずか観客7人の前で行われた初公演以来、この手のグループの草分けとして歴史を作ってきた存在だ。「努力は必ず報われる」(高橋みなみ)という言葉に象徴されるメンタリティーが、第11期の川栄にも受け継がれていたのだろう。

 これに対し、乃木坂などは絶頂を極めていたAKBの「公式ライバル」として用意されたグループ。それこそ、自分が頑張らないとグループが存続しないかもというところでやってきた48系とは状況が異なる。語弊はあるが、自分がいなくてもなんとかなりそうな坂道系、と表現することも可能だ。

 実際、西野七瀬は5年前のインタビューで、デビュー当初は芸能界の競争主義に違和感を抱いていたことを明かした。

「『上を目指す』っていうのは別にいいやって。(略)でもだんだん、そうじゃなくなりました。最初は『ぐるぐるカーテン』の選抜のときに隣にいた子が、次の『おいでシャンプー』では選抜から居なくなって…、自分は2枚目で選抜に残れるとは思ってなかったのに、なんでだろうって思って…。そこまで『次のシングルに入るために何かしなきゃ』って、あんまり思ってなかったんです」(ベストタイムズ)

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欲がなく、素朴な坂道系