※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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バルーン治療は、薬剤をコーティングしたバルーンを患部で膨らませることにより、狭窄した血管を広げる。ステント治療は、患部に筒状の器具を留置することで、血流を確保する(イラスト/今崎和広)
バルーン治療は、薬剤をコーティングしたバルーンを患部で膨らませることにより、狭窄した血管を広げる。ステント治療は、患部に筒状の器具を留置することで、血流を確保する(イラスト/今崎和広)

 心臓を動かす血管・冠動脈。この血流が止まってしまうと狭心症や心筋梗塞になり、息切れや激しい痛みを引き起こす。狭心症や心筋梗塞症などの虚血性心疾患の総患者数は、約80万人となっており、このうち急性心筋梗塞の患者数は約8万2千人とされる。急性心筋梗塞は、冬場と早朝に発症しやすく、「ヒートショック」はお風呂場の脱衣場で急に寒くなって血圧が上がり、その後の入浴で急激に血圧が変動するために起こると言われている。その治療法を紹介する。

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 狭心症、心筋梗塞に対する治療法が、カテーテル治療だ。経皮的冠動脈形成術(PCI)という。冠動脈に細い管を挿入して、狭窄した部位でバルーン(風船)を膨らませる。さらに血管を広げたところに筒状の網(ステント)を設置して補強し、血流を確保する。

 心筋梗塞は、心臓を養う血液を送る冠動脈が塞がってしまう病気で、通常は狭心症の悪化により発症することが多い。だが、狭心症を経ずに突然発症した急性の場合(急性冠症候群)は突然死に至ることもある。

 東海大学病院循環器内科教授の伊苅裕二医師はこう話す。

「それまで自覚症状もなく、血管の画像診断でも何も問題が見当たらなかったのに、その直後に突然起こることもあります。こうしたケースはきわめて厄介です」

 急性の場合は、至急救急車で搬送して、PCIで一刻も早く血流を再開させなくてはならない。

 通常、病院に到着してから、PCIにより血流が再開するまでを90分以内でおこなうべきだと言われている。急性では、発症から24時間以内に亡くなる可能性が30%だ。

 PCIのメリットは、手術に比べ、心身ともに患者の負担が少ないこと。高齢や他の病気があるなどの理由で、外科手術を受けるには身体的に難しい人に対しても、PCIは大きく貢献してきた。

 一方、血管の分岐部に病変がある場合や何カ所も狭くなっているような場合にはPCIは向いていない。また、病変部分を広げるという方法で、抜本的に血管を治す治療ではないため、再狭窄を起こす可能性もある。

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