ただし、近年、PCIに使用するステントは進化し、再狭窄はかなり減ってきた。

「特殊な薬が塗られている薬剤溶出ステント(DES)は、表面から薬が溶け出すことで再狭窄を抑えます。再狭窄率は5~10%程度にまで低くなりました」(伊苅医師)

 以前は治療後、抗血小板薬を1年程度2剤飲まなければならなかったのが、現在は服用期間が1~3カ月程度に短縮された。これによって薬物治療の合併症である出血の可能性が低くなった。

■検査法の進化で治療の正確さが向上

 近年では、IVUS(血管内超音波)という治療を正確にするガイド的な検査方法が治療の安全性向上に貢献している。超音波を用いて血管内部の断層画像をリアルタイムで見ることのできる検査だ。治療直前にできるため、より安全確実に治療をおこなうことができる。

「ステントの両端が病変の上に載ってしまうと成績が悪くなります。そうならないように病変に触れないようにするサイズのステントを正確に留置できるのもIVUSを利用する利点です」(同)

 難治例である慢性完全閉塞病変(冠動脈が完全に詰まってしまった状態)も、IVUSにより正確に治療することがより可能になってきた。

 ステントを使用しない治療法もできている。薬が塗り込まれた「ドラッグ・コーティング・バルーン」を膨らませることで、血管を広げる。東邦大学医療センター大橋病院循環器内科教授の中村正人医師はこう説明する。

「いいステントが増えて治療成績が上がっていることは確かです。しかしステントに不向きな病変もあります。このような場合には留置しないで済むのであれば、そのほうがいいのです」

 カテーテルの挿入方法も変わってきている。治療後に出血などの合併症が多い太もものつけ根からではなく、合併症の少ない腕や手首からのアプローチが増えた。

「年間治療数が200例を超えるような病院では、手首から80%以上実施しています。患者さんがより楽な手の甲側からのアプローチもあります。手首、腕からアプローチしている病院のほうが死亡率も低いという報告もヨーロッパから出ています」(伊苅医師)

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