■カテーテルの前に薬物療法の傾向

 薬物療法も進化している。虚血の評価の重要性が再認識されたため、狭窄があっても虚血がない場合にはからだへの負担が大きい侵襲的な治療を避け、薬物療法で対応するケースも増えている。

「近年では、安定冠動脈疾患であれば、PCIにすぐにはいかずに、薬物療法で様子をみる機会が増えています。また、PCIやバイパス手術による治療後の二次予防にとっても薬物療法は重要です」(中村医師)

 二次予防の薬物療法としては、脂質異常症の治療に使われるスタチンなどがある。

 他にも患者の病態に応じて、冠動脈のけいれんを予防する薬、血栓を抑える抗血小板薬、動脈硬化を予防する薬など、投与する薬の選択肢が増え、薬物療法の有効性は高まっている。

 特に、心筋梗塞に対して注意を要するのは、遺伝により発症する家族性高コレステロール血症の人だ。薬物療法を受けずに放置すると、心筋梗塞の発症年齢が通常の人より10~20年早くなり、男性は55歳未満、女性は60歳未満で発症するおそれがある。そのため、この病気がわかったら、早めに受診して薬物療法を始める必要がある。

 家族性高コレステロール血症の患者に対しては、PCSK9阻害薬という薬の登場により、病気をコントロールできるようになってきた。

 また狭心症で薬物療法を受けている患者や、治療後の二次予防として薬物療法を受けている患者は、生活習慣の改善にも留意し、心筋梗塞を未然に防ぐことが重要だ。

 心カテーテル治療(PCI)については、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』で、全国の病院に対して独自に調査をおこない、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。ランキングの一部は特設サイトで無料公開しているので参考にしてほしい。「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文・伊波達也)