■患者に寄り添う“やさしい医療”、人間にしかできない医療とは


 
 今後、求められる医師とはどんな医師なのか。大塚医師はまず、医師の基本を問い正す。

「医師は専門職です。だからこそ専門的なトレーニングをしっかりと受け、医学的知識があるからこそ患者さんの体にメスを入れてもいいという資格を与えられています。まずはきちんと勉強していくこと、そこから逃げないことが大事です」
 
 そして、患者さんを治療する際に、「どんな言葉をかければつらくないか」「治療に前向きになるか」「傷つかないか」を常に考え、患者さんに寄り添う“やさしい医療”を提案する。

「これは、日ごろのコミュニケーションの中で磨かれるもの。それが医師になってから役立ちます」
 
■エビデンスとナラティブの両方を勉強し、医師は日々精進

 エビデンスは重要だが、患者さんと話すときは、冷たくなりすぎないようにナラティブ(物語と対話に基づく医療)の視点で接するようにしているという。大事なのは「バランス」。

「これからの医師はエビデンスとナラティブの両方を勉強し、日々精進していくべきだと思います」
 
 AIの登場で、今後の医療現場は大きく変わる可能性がある。いま医学部に入りたいと思っている人たちの10年後や20年後も、いまと同じような医療体系になるのかは「正直わからない」と大塚医師は話す。

「医師の役割はもちろん、診断と治療。そこがあえて人間である必要とは何か。これから医師を目指す人には、ぜひ考えてみてほしいと思います」