■正しい医療情報を伝えるため、多忙な医師業の傍ら医療情報を発信


 
 大塚医師は現在、京都大学医学部特定准教授であるほか、京都大学病院皮膚科の病棟医長で同病院のがんセンターメラノーマユニットのリーダーでもある。また腫瘍免疫、特にメラノーマに対するPD -1抗体の治療効果などの研究も担当する。
 
 病院での一日の仕事は、基本的に8時から20時までだが、曜日によって異なる多くの業務をこなす。例えば月曜日の午前中は初診の外来、午後は病棟医長またはユニットリーダーの立場で17時まで会議をし、夕方からは病棟カンファレンス。その後は20時までデスクワーク、といった具合だ。

 唯一、自分のことができる金曜日でも、教科書の執筆や大学院生の研究論文のチェック、学会のケースレポートの添削、研究費の報告書や申請書などの書類仕事をこなす。夕方からは、メラノーマなどの勉強会に座長として参加もする。

「アトピーとメラノーマの二つの学会に所属しているので、土日はほぼ、どちらかの学会に参加します。コロナ禍の今はウェブ学会になりましたが、以前は毎週のように全国を飛び回っていました」

 多忙な医師業の傍ら、書籍の執筆やコラムニストとしてニュースサイトでの連載、SNSで医療情報の発信もしている。医師仲間で立ち上げた「SNS医療のカタチ」ではYouTubeでも配信している。

「医療情報を発信するようになったきっかけは、ニセ医療情報に困っている人や、アトピーの患者さんで病院に来ない人に正しい医療情報を伝えたかったからです。そうした患者さんの医療への不信の背景にあるのは、医療者とのコミュニケーションエラー。それをどうにか解消したかった」
 
 医療情報を発信してみて感じるのは、医療デマを信じてしまっている人を正しい医療に導くことの難しさだ。特にテレビの影響力は大きく、多くの人がその情報を真実と受け取りやすいという。

 病院に来て正しい治療をしていれば、悪化しないで済んだ疾患で苦しむ患者さんたちを目の当たりにしながら、「医療リテラシー」を高めてくれることを願い、発信し続けている。

「医師が医療情報を発信することで救える命があると思っています。そもそも病院に来ない患者さんを、診察室で待っていても仕方がないですから」

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