山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員
写真はイメージ(GettyImages)
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「緊急避妊薬」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 今月8日、政府が「緊急避妊薬の薬局での販売を検討する」方針であることが明らかとなりました。

「緊急避妊薬」とは、その名の通り、避妊に失敗したときに、緊急的に内服する避妊薬です。性交渉から3日以内、ないしは5日以内に内服しないと効果が期待できない薬であり、避妊に失敗してしまった場合や、そもそも避妊をしていなかった時に、緊急的な手段として翌朝に内服されることが多いことから、モーニングアフターピルやアフターピルとも呼ばれています。こちらの名称を耳にしたことがある方も多いかもしれません。

 世界保健機関(WHO)は、「意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性は、緊急避妊薬にアクセスする権利がある」として、必要とするときに手に入れることができるよう、複数の入手手段の確保を各国に勧告しています。

 世界には、すでに市販化されている国や、処方箋がなくても薬剤師を通じて購入することができる国が存在する一方で、日本はというと、これから薬局での販売を検討されるという段階であり、処方箋がないと緊急避妊薬を手に入れることはできません。価格も1万円前後と高額です。これでは、WHOが勧告しているような女性にとって緊急避妊薬にアクセスしやすい環境であるとは到底言えないのではないでしょうか。

 恥ずかしながら、私が薬局で緊急避妊薬を購入できるということを知ったのは、去年の秋頃でした。

 ミャンマーのヤンゴンに学会で訪問した際、たまたま立ち寄ったスーパーの中にある薬局に、低用量ピルと緊急避妊薬が陳列してあるのを発見。日本以外の国でも、てっきり処方箋がないと手に入らないと思い込んでいた私にとっては、カルチャーショックでした。さらに、日本だと1万円前後くらいの値段で処方されている緊急避妊薬が、(もちろん物価の差はあるものの)100円もしなかったことへの衝撃は忘れられません。ちなみに、ピルの横にはバイアグラやコンドームも置いてありました。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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日本での緊急避妊薬の薬局販売の検討は初めてではない