薬局で購入できるとなると、いざ必要となった時に駆け込むこともできますし、常に持ち歩くことも可能です。WHOが勧告するような、意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性が緊急避妊薬にアクセス可能であるミャンマーの現状を目の当たりにし、日本の現状に改めて憤りを感じざるを得ませんでした。

 実は、緊急避妊薬を薬局で販売するかどうかについての検討は、初めてではありません。3年前、厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会」で緊急避妊薬の市販化について議論されたことがありました。

 緊急避妊薬についての議論は、第2回会議と第3回会議で行われたのですが、検討会の委員は男性12名、女性4名。委員に産婦人科医は含まれておらず、参考人として日本産婦人科医会の常務理事や産婦人科医である国立国際医療研究センター病院の副院長が入っているだけでした。

 議事録には、「緊急避妊薬が市販化されると100%妊娠を阻止できると、一般の方が誤解されるのではないかと危惧する。また、何パーセントかの女性は知らない間に妊娠が継続していくとか、子宮外妊娠をきたすケースがあることまで薬剤師の方がしっかり説明できるとは思えない。(緊急避妊薬を内服する女性は)知識も経験もないので、妊娠に気付くのが遅れてしまう恐れがあり、そこが一番心配するところ」(国立国際医療研究センター病院副院長)、「性教育そのものがまだ日本はヨーロッパやアメリカからかなり遅れている。うちの妻は薬剤師ですが、ピルの話になると全くチンプンカンプンだ」(日本産婦人科医会 常務理事)」といった発言が残されており、これらの発言に対して、「薬そのものの安全性よりも、むしろ患者の理解や薬剤師の知識や理解の不足などといった、環境や使われ方への御懸念が多いことが気になる」という検討会の委員からの発言もありました。

 この検討会の後のパブリックコメントでは、緊急避妊薬の市販化への賛成意見は320件、反対意見はわずか28件と、大多数の方が市販化を賛成したものの、緊急避妊薬の乱用や悪用の恐れ、薬剤師が十分に対応できるのかといった懸念から、緊急避妊薬の薬局での販売は「時期尚早」であるとして、緊急避妊薬の市販化は認められませんでした。

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コンドームは安価で容易に手に入るのになぜ?