心原性脳塞栓の場合、通常の心電図検査では不整脈が出ず、原因がわからないことも多い。そのため近年では、からだに植え込んで長期間計測できる、ごく小型の植え込み型心電図記録計なども開発されている。

■治療のリミットは最大8時間以内

 また動脈硬化が進み、首の血管が通常の50%以上狭くなっている場合などには、脳梗塞の発症を予防する目的で頸動脈ステント留置術という治療をおこなうことがある。足の付け根の血管から管を入れ、頸動脈の狭くなった部分にステント(網目状の金属のチューブ)を開いて血管を広げると同時に、血管壁から剥がれたコレステロールや血の塊を回収する方法だ。局所麻酔ででき、からだへの負担も小さい。頸動脈ステント留置術は、2008年4月に保険適用されている。

 実際に脳梗塞を発症したら、一刻も早く病院に行くことが何より重要だ。顔が左右非対称になっている、両腕を前に出したとき片方が上がらないか下がってしまう、ろれつが回らない、しゃべれないなどの症状が少しでもあったら、すぐに救急車を呼び、専門の病院で治療を受ける。

「ちょっとおかしいけど一晩様子を見ようか、というのは絶対にダメです。脳梗塞は広がります。仮死状態でまだ生きている周囲の神経細胞は、すぐ治療をして詰まりを解消すれば救えます。しかし時間が経てば、あっという間に死んで、機能が戻らなくなってしまうのです」(同)

 発症直後の治療には、t-PAという薬剤を点滴して詰まった血栓を溶かす方法(血栓溶解療法)と、血管に管を通して詰まった血栓を回収する方法(血栓回収療法)がある。

 血栓溶解療法は、発症から4.5時間以内であれば治療可能だが、検査に1時間程度はかかるため、実質的には3.5時間以内に病院に到着する必要がある。

 しかし、独居で人目がないところで倒れたり、寝ている間に発症したりして間に合わないことのほうが多い。また太い血管が詰まった場合には、t-PAだけで溶かすのは難しい。

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