(イラスト/今崎和広)
(イラスト/今崎和広)
『新「名医」の最新治療2020』より
『新「名医」の最新治療2020』より

 後遺症が残って寝たきりや要介護になる可能性も高い脳梗塞。特に、過去に一度脳梗塞を起こした人は再発しやすく、より積極的な予防が必要になるという。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、具体的な予防対策や発症直後の治療について、専門医に取材した。

【図表】脳梗塞の患者数は?かかりやすい年代は?

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 脳の血管が詰まって起きる脳梗塞には、三つの種類がある。高血圧が原因で細い血管が詰まるラクナ梗塞、動脈硬化によってより太い血管が詰まるアテローム血栓性脳梗塞、心臓にできた血の塊が脳へ流れて詰まる心原性脳塞栓だ。

 これらの脳梗塞を予防するには、動脈硬化や不整脈などを引き起こすリスクを減らすことが第一となる。最も重要なのは血圧の管理で、130-80を標準に少しでも高ければ、減塩や減量、適度な運動をするなど生活環境を見直す。十分な効果が得られない場合には、薬を服用して低く維持することが望ましい。

 しかし、動脈硬化が進んでいる場合や、症状がなくても検査で脳梗塞があると言われた人、過去に脳梗塞を起こした人などは、より積極的な予防対策が必要だ。兵庫医科大学病院脳神経外科の吉村紳一医師は言う。

「一度脳梗塞を起こした人の2人に1人は、10年以内に再発するというデータがあるので、しっかり予防をしてほしいと思います。リスク管理や予防を怠ると再発の可能性が高まります」

■それぞれの原因に合った薬を

 脳梗塞を予防する薬には、大きく分けて抗血小板薬と抗凝固薬という二つの種類がある。横浜市立脳卒中・神経脊椎センター脳神経内科部長の城倉健医師は、次のように話す。

「抗血小板薬は、動脈硬化によって血管が詰まるのを防ぐためラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞の予防に、また抗凝固薬は、血の塊ができるのを防ぐため心原性脳塞栓の予防に有効です。抗血小板薬ではアスピリン、抗凝固薬ではワルファリンなどが使用され、新しい薬も開発されています」

 薬剤の役割が異なるため、患者それぞれの脳梗塞の原因に合った薬剤で予防対策をすることが不可欠だ。

「検査で脳梗塞と診断された人や脳梗塞を発症した人は、必ず一度は脳外科医や神経内科医、脳卒中の専門医を受診して、自分の脳梗塞の原因が脳の血管か心臓かを調べてもらい、適した予防薬を処方してもらうことが極めて重要です」(吉村医師)

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