※写真はイメージです(Gettyimages)
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 人生で最も費用対効果が高い節約術は、「生前整理」かもしれない。生前整理とは、生きているうちに自分の死や老いに備え、不用品を整理したり、資産状況などを把握し、自分の意志がはっきりしているうちに、大切な人に想いを伝えておくこと。

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 生前整理や遺品整理の現場で7年近く活動を続けている生前整理診断士の大島美香さんは、「生前整理は、物・心・情報(手続き関係)の整理です。物・情報は完璧でも、心の部分が整理できないために、寂しい最期を迎えるケースもあります」と話す。実際にあった事例をもとに、有益な生前整理について聞いた。

■夫と子どもに先立たれた83歳の女性

 愛知県の梶田とし子さん(83歳、仮名)は、5年ほど一人暮らしをしていた。夫は20年ほど前、65歳でがんにより死去。娘は10年前、43歳で心臓の疾患により他界。同居していた息子は5年前、朝になっても起きてこないため、心配した梶田さんが部屋を見にいくと、布団の中で冷たくなっていた。検死の結果、死因は心疾患とされた。45歳だった。

 次々に家族に先立たれたものの、梶田さん自身は健康そのもの。生活習慣病や認知症になることもなく、後期高齢者と言われる年齢になっても、自分の身体も家の中もきちんと管理できていた。

 しかし80歳を超えたころから、万が一のことを思うと、このまま一人暮らしを続けることに不安を覚え始める。

 悩んだ末に梶田さんは、元気なうちに高齢者向け施設に入所することを決意。ただ、施設に入るためには「保証人」が必要だが、梶田さんには息子も娘もいない。そこで、すでに成人している亡き娘の子どもたち(孫)に頼もうと、久しぶりに連絡をとった。すると、「迷惑をかけないで!」と拒絶されてしまう。

 もともと人付き合いが苦手な梶田さんは、近所付き合いもなく、相談できる友人・知人もおらず、途方に暮れた。

 なぜ孫たちは梶田さんを拒絶したのか。梶田さんは「娘婿が孫に自分のことを悪く言っているからではないか」と考えている。

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娘婿を叱責した梶田さん