■孫たちとの絶縁

 夫は生前、梶田さんや子どもには厳しかったが、孫のことはとても可愛がった。出産祝い金に始まり、ベビー用品、洋服、入園・入学準備金、家電製品、普段の食費など、「自分たちは贅沢しなくてもいいから」と、お金の援助を惜しまなかった。そのため梶田さんと孫たちとの関係も良好で、「おじいちゃんおばあちゃんの家は居心地がいい」と、孫たちだけで遊びに来ることも少なくなかった。

 ところが、娘の夫は何年か前から浮気をしていたようだ。夫が浮気していることに気づいた娘は、梶田さんに何度か相談した。夫がいつから浮気していたかは分からないが、相手が誰なのかは分かっていた。梶田さんは、娘から相談されるたびにじっと耳を傾け、優しく慰めたが、最後には必ず「家へ帰って、夫婦でしっかり話し合いをしなさい」と促した。

 娘から何度目かの相談を受け、いつものように諭してから数日後。娘は買い物に出かけた先で突然倒れ、救急車で病院へ搬送されたがそのまま亡くなってしまう。

 梶田さんは、「娘が死んだのは、娘婿の浮気によるストレスが原因だ」と思い、娘の葬儀の際に娘婿に詰め寄った。しかし娘婿は少しも動揺せず、悪びれる様子もない。そればかりか、一緒にいた娘婿の母親から嫌味を言われ、梶田さんは悔しい思いをしただけだった。それ以降、良好だった孫たちとの関係もギクシャクしていく。

 梶田さんは、「娘婿が孫たちに、自分のことを悪く言っているのだ」と推測。だから「施設に入るために保証人になってほしい」と頼んでも、拒否したのだと思った。

「これまで随分可愛がってあげたのに、保証人にさえなってくれないなんて。こんなひどい孫たちとはもう関わりたくない!」

 梶田さんは孫たちと縁を切る決意をした。

■身寄りのない人の生前整理

 生前整理診断士の大島さんと初めて会ったころの梶田さんは、全く笑わなかった。口から出る言葉は、「辛い」「悲しい」「ひどいことをされた」といったネガティブな言葉ばかり。心を閉ざし、毎日を泣きながら過ごしていた。

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保証人は誰に…?