日本発の画像診断AIで薬機法承認を受けるに至った企業は2社存在する。1社目は、昭和大学・名古屋大学と共同研究を進めているサイバネットシステムだ。2019年3月、大腸内視鏡の画像を検査中にリアルタイムで解析し、腫瘍の状態を数値で示すAI「EndoBRAIN」を発売した。国内のがん罹患数1位である大腸がんの診断に役立つAIだ。同社医療ビジュアリゼーション部の須貝昌弘氏は「かなりの精度を維持している」と語る。

「専門医でない医師が見た場合でも、AIの併用で正診率が90%に上がりました。病理診断を効率化できると考えています」(須貝氏)

 また、同じく大腸内視鏡検査中に病変(ポリープ)の有無をリアルタイムで解析するAI「EndoBRAIN−EYE」も今後発売予定だ。試験での現場からの反響も良く、医師が見落とした病変をAIが発見した例もあったという。

「がん患者が増えていく一方で、医師の数は足りていません。EndoBRAIN−EYEで病変を見つけ、EndoBRAINでそれが腫瘍か非腫瘍かを判断する、という流れでAIが貢献できれば」(同)

■中国のデータを基に新型コロナにも対応

 国内のもう1社は、東京大学の研究室のメンバー3人でスタートしたエルピクセルだ。19年10月、脳MRI画像を解析して脳動脈瘤の診断支援をおこなうAI「EIRL aneurysm」を発売した。

「このAIが現場に与えたインパクトは二つあります」と同社代表取締役・島原佑基氏は話す。一つ目は「AIがないと不安になってしまう」ということ。一回でも見逃しをAIが検出した経験がある医師は以後、AIの重要性を強く認識するという。二つ目は診断に自信が持てること。AIが自分と同じ診断を下したことがわかると、多くの医師は安心するという。

「脳動脈瘤の画像解析AIは過去、誰もやったことがなく、始まったばかり。今後は検診での一次スクリーニングなど、医師の『よきパートナー』として認知・活用されることをめざします」(島原氏)

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肺炎を検出するAIはコロナで迅速に改良され