そして、対人的な産業はコロナショックによるマイナスの影響が大きい。株式会社ナウキャストが算出しているJCBカードの取引支出データを分析すると、一般的な産業の消費がマイナス5%前後であるのに対して、対人的な産業の消費はマイナス10%を超えている(2020年1月前半~3月後半の対前年同期比。4月中旬時点での速報値)。

 つまり、非正規労働者の多くは収入の低い対人的な仕事を担っているが、その仕事の多くは女性によって支えられており、対人的な産業の消費が減ることで、特にこうした仕事に従事する女性の生活が危機に瀕しているということだ。

 論文の共同執筆者の一人で、マサチューセッツ工科大学経済学部博士課程の菊池信之介氏によれば、女性の中でもとくに影響が大きいと考えられるのは子育て世帯ではないかという。

「休校措置などのため子どもの面倒を見なければならないこともあり、リモートワークがしづらい子育て世帯は厳しい状況なのではないかと思います。さらには、それらの世帯がひとり親であるかどうか、配偶者の収入がどの程度であるかといった面も見る必要があるでしょう」

 上掲の論文は、コロナショックはこうした層へのマイナスの影響が大きいことから、短期的に格差が拡大する可能性があると結論づけている。

「格差是正のためには、今後も対象を拡大しつつ給付を継続することが必要です。もちろん女性だから給付すべきということではありません。非正規雇用かどうか、対人的な仕事に就いているかどうか、という点が重要です。もっともそれらの要素を足し算すると、結局のところ女性に給付が必要ということになるかもしれません」(菊池氏)

 短期的にこうした支援が求められる一方、格差の解消のためには、社会の構造が変わる必要がある。だが、この問題は根深い。菊池氏によれば、男女の賃金格差には、正規/非正規という雇用形態の違いだけでなく、一般職/総合職というキャリアの分け方、産休・育休制度の取得率の低迷など、いくつもの原因が考えられる。

次のページ
コロナショックが女性に与える影響は世界共通の課題