またAさんが言うように、自治体によっては母子家庭に手当を加算する取り組みを独自におこなっている場合もあり、地域格差も懸念されている。リトルワンズの代表理事・小山訓久氏はこう話す。

「日頃より全国から相談を受けていますが、コロナ後には相談数が3倍になりました。特に食料の支援や家賃の支援が3月、4月で100件以上になっています。行政も懸命に尽くしていますが、人手が足りなかったり、一人ひとりの状況に応えきれなかったりと、支援が届いているとは言いづらい」

 数字に目を向けてみよう。総務省が5月15日に発表した労働力調査によれば、アルバイトなどの非正規労働者のうち、69%は女性だ(1~3月期平均)。また29日に発表された同調査によれば、非正規労働者の数は前年同月に比べ97万人減少(4月分)し、比較可能な2014年1月以降で最大のマイナスとなった。

 やはり今回のコロナショックでは、男性よりも女性が大きな影響を受けているのだろうか。

 緊急事態宣言下の4月27日、「コロナの時代の経済格差」についていち早く分析した論文が発表された。総務省の就業構造基本調査(2017年)をもとに男女の働き方について分析し、1月前半~3月後半の産業消費傾向に着目した論文だ。

 論文では、まず仕事の内容を大きく「一般的な仕事」と「対人的な仕事」に分類している。対人的な仕事とは、交通、小売、宿泊、外食、教育、医療、ヘルスケアなどフェイス・トゥ・フェイスを中心とする仕事のことで、一般的な仕事に比べて年収が低いことが多い。とくに一般的でリモートワークが可能な仕事の平均年収(479万円)に比べ、対人的でリモートワークが難しい仕事の平均年収(252万円)は200万円以上の差がある。

 分析によれば、アルバイトなどの非正規労働者は、「対人的な仕事」に従事している割合が高い。その割合は正規労働者で41%である一方、非正規労働者では67%であることがわかっている(小数点以下は四捨五入)。

 また、女性のほうが、対人的な仕事に従事している割合が高い。同調査から計算すると、その割合は男性で35%である一方、女性は67%である。

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特に影響が大きいのは子育て世帯の女性