球団側の日本人選手へのサポート体制もしっかりしている、と語るのはMLB日本人選手中心に取材するスポーツ紙記者。

「岩村の場合は米国挑戦が初だったため、フルタイムの通訳と契約し万全のサポート体制を敷いた。岩村退団後も次なる選手発掘のため、極東地域担当スカウトのポジションも新設。日本を中心にアジアでの調査活動を継続した結果が筒香獲得へ結びついた経緯がある」

 球団、地元など、フランチャイズ全体として日本人選手への理解度が深い。チームへの忠誠心が強く献身的にプレーすることをわかっているからだ。

「早い時期で結果が出なくとも長い目で筒香を見守ってくれるはず」と付け加えてくれた。

 秋山の場合、事情が大きく異なってくる。

「日本人選手未開の地を選んだのには驚いた。米国でも有数の保守的な土地柄。古くからの独特の習慣なども残っている場所だけに、気を使うことが多くなるはず」(米国在住スポーツライター)

 本拠地シンシナティは、米国中西部オハイオ州に位置する中規模都市だが、野球をはじめすべてにおいて地元愛が強烈に強い町。強い逆風が待ち受ける可能性もあり不安要素も少なくない。

 かつてレッズには『トラディショナル・オープナー』の権利があった。毎年、本拠地開幕戦の権利が与えられ、どの試合より早くプレーボールが宣告されるもの。これは1869年、レッズの前身シンシナティ・レッドストッキングスが米国発のプロ野球チームとして誕生したことに敬意を表してのものだった。

 しかし1986年、デトロイト・タイガースがレッズより早く開幕戦開催。この際にはシンシナティ市議会が「デトロイトからの航空機乗り入れ禁止」の決議までおこなった。シンシナティ市民は野球、そして自らの町へのこだわりが強烈だ。

 近隣に位置する全米3位の大都市シカゴへの意識も強い。同じナ・リーグ所属の伝統球団カブスへの対抗心は並々ではない。

 MLB取材経験のあるスポーツ紙記者は、シンシナティでの苦い思い出を振り返る。

「福留孝介(阪神)がカブス在籍時代、シンシナティの試合で取材パスを発給してくれなかった。カブス戦は地元メディアが多数来場するから、日本メディアには限定数しか出さないということ。しかしレッズは消化試合で注目度もかなり低く、取材者数も数えるほど。当然、広報部長を交えて揉めに揉めたが結局、ゴリ押しされて取材できなかった。その後、地区優勝が決まりそうな大事な試合では、メディアが多くても簡単に取材パスを出してくれたんですがね」

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在籍するチームによってパフォーマンスも変わる?