試合のみならず取材者数など、すべてにおいてカブスには負けたくないことの裏返し。地元愛が強いが故だったのだろう。仮に秋山が結果を残せなかった場合、日本からやってきた『外様』選手への反応が心配になる。

 MLB挑戦時、どの都市を選ぶかは活躍への大きな要素と言える。周囲からの逆風を受け、早々とその土地を後にした選手もいる。よく言われるが、ニューヨークなど大都市でその傾向は顕著だ。

 伊良部秀輝、井川慶(元ヤンキース)、松井稼頭央(元メッツ、現西武二軍監督)は、ニューヨーク時代にファンやマスコミの大ブーイングにさらされ日本時代とは別人のようだった。

 また地方の牧歌的な場所にも、選手への評価や風向きの波が大きく変動する土地がある。

 イチローが数年在籍(15~17)したマイアミ・マーリンズは中南米系の多いマイアミ。地元コミニティの結束が強固で、レジェンドのイチローでさえブーイングが起こることもあった。また松井稼頭央がプレーしたことがあるコロラド・ロッキーズは山間部に位置するデンバーが本拠地。保守派が主流の都市であり、移籍当初の松井には懐疑的な評価も多かった。しかし2007年ワールドシリーズ進出を果たすと、それまでのものが嘘のように大人気となったのはデンバーらしかった。

 筒香のタンパと秋山のシンシナティはどちらも後者にあたる地方の中小規模都市。しかし伝統球団と新興球団の違いなのか、MLB球団を取り巻く環境は対照的だ。

「レッズも初の日本人選手ということでリサーチは行い、準備は整えているはず。以前のようなことはないと思うが、土地の風習は変えられない。これは差別などとは異なる話で、いわゆる文化。始まってみないとわからないが、秋山自身が結果を出すしかない」

 前出の米国在住スポーツライターが言うように、秋山を取り巻く周辺環境の方はかなりタフであると言わざるを得ない。

 開幕へ向けてカウントダウンへ入ったMLB。解決すべき問題は残っているが、ナショナルパスタイムの復活を待ち望む声は多い。新型コロナウイルスの壊滅的被害に苦しむ米国にとって、野球の存在が大きな希望になるのは間違いない。そして野球への期待度の高さは我が国も同様。筒香と秋山の2人には環境にしっかりアジャストして実力をいかんなく発揮して欲しい。