とはいえ、最近気になるのは、日本では新型コロナウイルスの新規感染者は減ってきている一方で、医療従事者や入院患者さんへの感染は未だに確認されているということです。

 多くの報告から、新型コロナウイルスは高齢の方や糖尿病や高血圧、心血管疾患といった基礎疾患のある方のほうが、感染すると重症化しやすいことがわかっています。病院に入院している患者さんは、高齢の方が多く、何かしらの疾患を持っている方ばかり。重症化のリスクがある人が大勢入院しているといえる病院で、院内感染が起きることは避けなければなりません。

 新型コロナウイルスの院内感染が起きてしまっている原因の一つとして、医療従事者が気づかぬうちに、院内でウイルスを拡散してしまっていることが考えられています。このことを示唆する英国のケンブリッジ大学がアデンブルックス病院で行った調査報告をご紹介します。

 アデンブルックス病院では、入院した患者に対しては、新型コロナウイルスについて定期的にスクリーニングを行い、必要に応じて隔離するという対応が取られていた一方で、医師、看護師、理学療法士など第一線で患者に接する医療従事者含め、病院で働くスタッフには、症状が現れた場合にのみ検査を行い、陽性であれば勤務を外すという対応が取られていたのですが、今回の調査によって、1,000人を超える病院スタッフの3%が新型コロナウイルス陽性、つまり病院スタッフの3%が無自覚で新型コロナウイルスに感染していたことがわかりました。感染が判明した病院スタッフのうち、約5人に1人は症状を全く自覚しておらず、5人に2人は軽度の症状であったために、新型コロナウイルスの感染を疑われていなかったといいます。

 研究チームの一員であったマイクウィークス博士とスティーブンベイカー教授は、「病院の全スタッフは、症状の有無に関わらず、新型コロナウイルスについて定期的に検査を受ける必要があり、病院内での感染拡大を防ぐために不可欠である。」と指摘しています。医療従事者が気づかぬうちに、院内でウイルスを拡散することは避けねばなりません。日本においても、症状の有無に関わらず、医療従事者が定期的に検査を受けられる医療体制も整える必要があると私は考えています。

 とは言え、オンライン診療は、対面での診療の時には得られる身体所見を得ることが難しく、電波状況がよくないと途中で通話が途切れてしまう、オフラインで繋がらない、といったケースもありました。オンライン診療したものの、薬が早く欲しいと処方箋を取りにクリニックまでお越しになったこともありました。

 画面越しの対面とは言え、視診や触診ができず、症状や経過のみで判断することは難しいと感じることも正直あります。院内感染や病院に受診することによって感染するリスクを減らすことも大切ですが、オンライン診療と対面診療をうまく使い分ける必要があると感じる今日この頃です。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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