■コロナが引き起こした、今まで経験したことのない問題

 まだまだ収束のめどは立たない。だからこそ大切なのは、医療態勢を守ることだ。

「コロナの影響の中、がん医療はしっかりとやっていかなければなりません。そのためには、すべてを犠牲にしてコロナだけを考える状況は、大いに問題だと思います」  

 多くの内視鏡検査を行うことで感染拡大につながれば、その責任を問われかねない社会の風潮がある。一方、現在は国民全体の努力で感染がコントロールされつつある状況であり、失いかけている大事なものを見直すことが必要だとも語る。

「がん医療は二の次にしてはならないものであり、感染を気にしつつも態勢を整えて十分な内視鏡検査を行うような状況にしたいと思います。感染者の増加が徐々に抑えられつつある今くらいのスピードならば、重症患者も急激な増加はなく対応が可能です。我々は医療の専門家であり、今後も感染が広がらないように愚直に徹底した院内外での感染予防を心掛け診療に取り組みたいです」

 吉田医師は、コロナの影響で起こる今後の医療態勢の変化と展望についても話す。

「今回のコロナで得られたものもあります。接触や移動をできるだけ避けるためにウェブでの院内や他施設の医師との会議が導入され、患者さんへは電話での診療が積極的に導入されました。また、医療従事者の衛生面への意識もとても高くなったと思います。学会などもオンラインが利用されつつあり、会場へ集まらなくても開催できるようになり、今後、国際的な学会もこのような形での実施が可能になるかもしれません。そして、コロナが引き起こす今まで経験したことのない多くの問題に対し、医療従事者間で知恵を出し合って相談することでチーム力も高まった印象もあります。コロナは災害ですが、こうなった以上は前向きに考えるようにし、何かしら得るものがあればと思っています」

(文・AERAムック編集部/濱田ももこ)