※週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』より
※週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』より

 更年期障害は症状の出方に個人差があり、軽い重いがある。女性にとって重要な問題である更年期障害に、うまく対処するためにはどうすればよいのか。週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』では、漢方医学からのアプローチについて専門医に取材した。

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「漢方医学であっても、処方でどうにかしようということばかりを考えた場合には、その時点で、西洋医学で薬を処方するのと同じことになってしまいます」

 そう前置きした練馬総合病院漢方医学センター長の中田英之医師は、「更年期障害の諸症状を根本的に改善していくためには、日常の生活習慣の改善、そして季節ごとの過ごし方などを考慮するべきだということをしっかり認識し、実践することが大切です」と説明する。

「もちろん、お仕事など生活の諸事情で、すぐにつらい症状を和らげたいのであれば、処方で対処すべきです。漢方では、症状によって処方のバリエーションは豊富です。しかし私は、更年期障害の諸症状は、病気ではなく“不具合”と言っています。自分の日常生活に疑問を抱き、気づきをもって、行動を変容していけば、軽減するはずのものです」

 更年期障害とは、月経がなくなる前後2年間に起こる諸症状と定義されている。いくつかの症状や状態の積み重ねのうえで、最後の一線を越えるとホルモンの変動が大きくなり、不具合が出ることだ。 その土台となるのは脾胃(ひい)(胃腸機能)失調だ。脾胃失調により、体力低下、睡眠障害、社会的負荷の増加、それまでを振り返っての焦りといったことが積み重なり、そこに女性ホルモンの減少が加わり、発症ラインを超えたときに、諸症状があらわれる。それが、ホットフラッシュだったり、めまいだったり、さまざまな不具合だ。

 ホットフラッシュやめまいは、漢方の概念では気が上がることを意味する。では、実際にどう対処すればいいか、中田医師はこう説明する。

「私は通常、初診では漢方薬の処方はしていません。さまざまな症状の根本にある原因は“脾胃失調”ですから、患者さんには脾胃を整えることを実践していただきます。食事では甘いものを避け、果物や乳製品を控え、和食中心にします。冷たいものは飲まないようにして、運動を心がけ、足湯や入浴でからだを温め、早寝を心がける。そんなあたりまえの生活を実践するだけで、症状は間違いなく改善します」

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季節に応じての過ごし方を知っていることも大切